日本エネルギー会議

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先鋭化する温暖化懸念(11)

温暖化対策は温暖化ガスの発生を抑制するだけでなく、過去150年間にわたって大気中に放出しつづけた二酸化炭素を固定化する方法を早期に開発することが必要だ。目先の利益だけを考えたこれまでの科学技術の利用が引き起こした環境問題は、新たな科学技術で解決するべきである。今回はその事例について。

植物は光合成により大気から二酸化炭素を吸収し炭水化物として固定している。人工的な二酸化炭素の固定は「人工光合成」とよばれ、固定化するだけでなく将来のエネルギー資源の枯渇を考えて二酸化炭素を資源として利用しようとする試みである。そのため低コストで効率的に大量生産が可能な技術であることが求められ、植物の光合成における太陽エネルギー変換効率(一般的に0.2~0.3%)を上回る変換効率を実現する必要がある。

人工光合成の鍵となるのは、日本が得意とする「光触媒」と呼ばれる光に反応して特定の化学反応をうながす物質を使う。この光触媒は太陽光に反応して水を分解し、水素と酸素を作り出す。次に、「分離膜」を通して水素だけを分離し取り出す。取り出した水素と工場などから排出された二酸化炭素とを合わせ、化学合成をうながす「合成触媒」を使ってプラチックの材料となるオレフィンを作る。

この人工光合成技術の実現に向けての研究開発が経済産業省の支援の下に7年前から始まっており、2014年度以降はNEDOへと引き継がれ、日本を代表する企業、大学、国立研究機関等、産学官の連携により現在も研究が進められている。2017年には変換効率が3.7%に向上。最終的には変換効率10%を目指している。中心となっている三菱ケミカルは、水と二酸化炭素から石油資源に頼らずに化学製品を製造する技術を2030年ごろに商用化したいとしている。

海外でもさまざまな研究開発が行われている。大気を巨大なファンで引き寄せ内部にある特殊なフィルターで二酸化炭素と水に分離、さらに水の電気分解で得た水素と合わせてバイオ燃料を作り出す事業がCarbonEngineering社によってカナダ西部のスコーミッシュ市で行われている。

この事業をビル・ゲイツ夫妻の「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」が支援している。また、スイス企業が二酸化炭素を地中で鉱物化する設備を持つアイスランド企業と共同で、大量の二酸化炭素を水に溶かして地下の玄武岩層に送り込み、2年程度で石に変え永久貯蔵する研究開発を行っている。同社は2025年までに、世界で年間に排出される二酸化炭素の1%(3.5億トン)を同社のプラントで回収する野心的目標を持っていると報じられている。大気中の二酸化炭素は非常に少なく、濃度はおよそ0.04パーセントしかない。とはいえ、人類が毎年排出する量を固定化するのは容易いことではない。

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