日本エネルギー会議

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福島の復興を考える(45)

福島県は伝統的に果物の生産が盛んな所だ。特にいちご、桃、さくらんぼ、ぶどう、梨、柿、りんごが有名。福島第一原発のある大熊町の梨は知る人ぞ知る名物で、原発で働きに来たひとはその品質の高さに驚いた。中通りに住む人も「大熊の梨」はわざわざ買いに行きたいもののひとつだったが、事故ですべての梨園が帰還困難区域に入ってしまった。

米作りも県内全域で行われており、野菜もトマト、きゅうり、なす、かぼちゃなどなんでもあり、それぞれ地域ごとにブランド化が進められている。こうした農産物は道の駅などで売っているほか、福島市の吾妻山のふもとにはフルーツラインと呼ばれる道路の両側で農家が直売のテントを出して季節ごとに果物を並べて売っている。今は桃が一番盛んな時期である。

福島県でも海や山にそして平地に温暖化の影響が現れている。全国の最高気温の表示に福島市、伊達市、会津若松市などが最近よく登場する。太平洋岸の浜通り地方は従来中通り地方と比べて夏は最高気温が平均5度低かったが、県全体が高温となっているため昔のように涼しさは感じなくなっている。私の家でも原発事故後も、県内産の農産物を買っているが、温暖化による気温の上昇、干ばつなどの異常気象で品質に問題を生じているのを感じている。

今年は梅雨が長引き入荷が途切れて、道の駅や直売所でも他県産の野菜を売っている場合が多くなった。その後、天気が回復したので県内産が入るようになり、形や色はよいのだが食べてみると皮が固く、甘さが薄いなどかつての美味しさはどの野菜や果物にもなくなってしまった。こうした品質の悪いものは従来市場には出回ることがなかったが、農家は生きていくためにかたちさえよければ出荷しているようだ。

農産物の出来が悪いことは、生産者、消費者ともによくわかっているはずだが誰も周囲に気を使って声を上げない。報道も沈黙。県知事はいつもどおりのパフォーマンスで福島の農産物PRをしている。生産者の高齢化と後継者不足の問題は当然の如く指摘されているが、温暖化影響による品質の問題は関係者に忖度して伏せられている。

近年、地球温暖化の影響により四季が変動しており、農業には変化が求められている。地球温暖化が進むと図1のように冷涼な地域はなくなり、リンゴの適地が北上していき福島県でリンゴを生産することが難しくなる可能性がある。

他にもブドウの着色不良、ナシの発芽不良などが挙げられており、生産地の北上の前に品質低下の問題が出てくる。福島県産のトマト、いちごなどもすでに問題が生じており、その影響を消費者も感じている。主食のコメは高温障害が発生する恐れがあり、高温の影響は害虫であるカメムシを増やす。畜産においても牛や豚が高温にさらされるのを防がなくてはならず、餌の価格高騰も考えられる。街のスーパーではアメリカ産、オーストラリア産の牛肉が幅を効かせている。
温暖化による農業の困難は生産額の減少や廃業、離農につながると考えられる。県やJAの関係者は温暖化による品質低下度を客観的に評価し、温暖化の影響に対して作物の種類の転換など先回りした対応をとる必要がある。

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