日本エネルギー会議

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帰還率が上がらないのは何故か

廃炉が進む福島第一原発の周辺の自治体では、避難指示を解除しても住民の帰還が進まない。先週手元に届いた復興庁、福島県、富岡町の合同調査結果(すべての区域の全町民を対象)では、「戻らないと決めている」と答えた人が、48パーセントで「まだ判断がつかない」「帰りたいが帰れない」を加えると元の町民の85パーセントが帰還する考えを示していない。アンケートの回答者は60歳台、70歳台が7割なので若い人の意見は反映されておらず、実際にはさらに帰還する考えのない町民の割合は多いはずだ。

現在、福島第一原発周辺の町村で解除された区域に居住している住民の数は事故前の町民数の1割から5割。しかもその半数が新たに移住してきた住民で、元の住民の帰還者はさらにその半数に過ぎない。自治体では帰還を進めると言いながらも、実際には新たな住民を呼び込むことに力を入れようとしている。

こうした結果となった原因はいくつか考えられる。
第一に、避難に伴う土地家屋の賠償が極めて高い水準で支払われ、その上に月一人10万円の精神的慰謝料(累計一人700~1500万円)も加わり、避難先などに土地も広く立派な家を構えることが出来たことだ。

第二に、避難指定解除が遅れ避難期間が長くなりすぎたこと。就職先、通学先、通院先などが固定化されてしまった。解除も国が手間を惜しんだのか大きな括りで行われ、除染による放射線量低下やインフラ復旧などの状況は細かく反映されず、当然戻れるところもいつまでも避難解除にならなかった。これは今残された帰還困難区域でも続いている。高齢者は避難してから8年以上経過したため、車の運転など田舎暮らしのための条件が失われた人も多い。

第三に、帰還した場合のメリットは帰還しなかった場合とくらべて特段なものはなく、帰還することで避難中のいろいろな優遇措置が外される恐れがあると考えている人もいる。放射性廃棄物置き場として土地を提供している人や、復旧工事や廃炉工事の関係者用に宿舎として家や土地を貸している人は帰還すれば安定した収入を失うことにもなる。

第四に、かつてのアンケート調査の回答にも見られたが、「他の人が帰らないから自分も帰らない」という互いに様子を見る姿勢があり、生まれ故郷の町とのつながりは維持したいものの、帰還に勢いはない。

回答者の多くが高齢であることもあり、町での今後の生活に「医療機関の
充実」「介護・福祉施設の充実」を望んでいることもアンケート結果に表れており、周辺自治体が今後、力をいれなくてはならないことが何かが端的に出ている気がする。

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