日本エネルギー会議

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原発事業の切り離しを

民間調査会社である富士経済の予測によれば全国の販売電力量に占める新電力シェアが2025年度に3割を突破する。2016年度以降、新電力の増加や電力自由化の認知度の高まりなどにより新電力の販売電力量が増加している。

近年、需要は年間9000億KWhを切りほとんど変わらないなか、6年後には9電力会社のシェアが大きく下がる。新電力のシェアが3割になるということは9電力の販売量がそれだけ減るということ。放っておけば9電力会社の経営規模が数年前の7割程度に縮小してしまう。電源の分散化、地産地消、個別の企業や住宅が自家電源を持つようになればさらにパイは縮小する。 9電力会社はこの事態に直面してどのような対抗策を打とうとしているのだろうか。危機感はどのくらい持っているのだろうか。

現在、9電力会社が所有している発電設備はほとんどが火力発電であり、再生可能エネルギーは水力発電を除けばわずかなものだ。また、原子力発電は再稼働の見通しがなかなか見えてこない。例えば東北電力の場合、昨年度末の電源別設備は水力が2.56、火力が12、原子力が2.75、水力を除く再生可能エネルギーは子会社10社のメガソーラーなど0.24しかない(単位は100万KW)。

日本でも再生可能エネルギーのシェアが徐々に拡大し、諸外国にくらべて割高なコストも下がりつつある。メガソーラーのFIT買取価格は今年度、KW14円に突入している。(陸上風力はKW16円) これから火力発電も昼間はシビアな価格競争に巻き込まれそうだ。

今後、温暖化対策のため石炭火力の運転に制限が加えられることが予想され、性能が劣る古い火力は稼働率がさらに下がるものと考えられる。最近、RE100(再生可能エネルギーのみにより事業活動をするという国際的運動)に参加する大手企業が増加しており、サプライチェーンにもこれを要求するようになっているが、9電力にはこの需要に応える能力はなく、大手企業は自前で再生可能エネルギーによる電力確保に向かっている。洋上風力で数百万KWの電源を構築しようという電力会社もあるがまだ10年単位の月日がかかる。  

9電力会社は電灯、電力の需要が細るなか、これからどのようにして利益を確保していくのだろうか。多くの会社ではガス供給や通信と併せて顧客の拡大に取り組んでいるが、互いに少なくなったパイの取り合いになりそうだ。各家庭の太陽光発電をネットにした仮想発電所、蓄電池に代わる電気の預かりサービス、電気自動車用給電スタンドの運営、スマートメーターや電柱を活用したビジネス、海外での電力事業などの話題も聞こえてくるが、いずれも従来の発送電一貫事業に代わって会社を支える事業となる見通しは得られていない。

そうしたなか、多くの電力会社は当面、再稼働までの原発の維持や廃炉を続けて行く必要があり、人材面、財政面で非常に大きな重荷となっている。東北電力の場合、張り付いている要員は火力が909人に対して原子力が1005人。同じ出力で比較すると原子力は火力の5倍も人手がかかっている。

今の体制をスリム化し、より効率的な経営をしなくてはならず、東京電力、東北電力、日立、東芝によるBWR会社の設立もその一環と見ることが出来る。しかし、早期廃炉による廃炉積立金の積立不足、使用済み燃料用の乾式貯蔵施設の建設費、廃炉で出る放射性廃棄物の不確定な処理処分費用、原子力規制委員会による相次ぐ改造指示への対応、予想される日本原燃に対するさらなる出資や債務保証(東北電力クラスでも現時点で出資金400億円弱、債務保証額600億円の合計1000億円で東北電力の当期経常利益468億円の2倍強)を考えるならば、原子力事業を9電力会社から引き離し、国が全面的に関与することも考えるべきではないか。9電力会社が電力の安定供給のための新たな事業展開を図るには、少なくとも廃炉を含むバックエンドについてはそうした方がよい。新電力に廃炉費用を分担させるのは、経済原則からして相当に無理がある。

国民生活の基盤である電力を完全自由化するにあたっては、供給の安全安定を確保出来るという前提がなければならない。現時点では電源の分散化が進んではおらず、まだほとんどが大電源集中方式である。9電力会社の経営が不安定になれば大停電が起きる可能性があり、それはなんとしても避けなくてはいけない。

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