日本エネルギー会議

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福島の復興を考える(48)

福島県の農業は福島第一原発の事故により作付面積が2011年度に前年からいきなり10ポイントも下落し、今も下落したままだ。以後、高齢化や後継者不足による農業人口の減少が加速し、県内の農業就業人口は6万人弱となり高齢者率は41%。県は農産品の輸出に力を入れているが、国内では輸入農産物との競争も激化している。食料自給率をこれ以上低下させないことや国土の保全を考えれば、若者の農業就業を促進するほかないが、問題は農業で十分に安定した収入が得られるかである。

農業就業人口の減少とともに耕作地の近くには多くの耕作放棄地が発生している。耕作放棄地とは1年以上作物を栽培せず再び耕作する見込みのない農地のことで既に全国に約40万ヘクタール以上存在しさらに現在も拡大している。 
対策として、この耕作放棄地に太陽光発電事業者を誘致することが考えられる。現在、太陽光発電事業者は設置可能な場所をほぼ開拓してしまい、新たな土地を探すのに苦労している。県が農家所有の耕作放棄地(耕作放棄地の三分の一は非農家が所有している)の農地転用を進める方針を出せば事業者にとっては朗報となり、農家は農業収入に加えて耕作放棄地から地代収入が得られ経営が安定する。

具体的な太陽光発電の例を見ると、3.3ヘクタール(1ヘクタールは10000平方メートル≒3000坪)の土地にソーラーパネルを設置した場合、約1万キロワットの出力が期待出来る。太陽光発電の稼働率は低いため年間には220万キロワット時の電力量となるが、それでもこれは600世帯が年間に使用する量である。

福島県の世帯数は74万世帯。1世帯あたり年間に約5000キロワット時を消費するため、福島県の全世帯の年間消費量は約38億キロワット時になる。計算上は出力1万キロワットの太陽光発電所を1700箇所設置出来ればこの消費量は賄える。それに必要な耕作放棄地は5600ヘクタールだが、福島県には25000ヘクタール以上の耕作放棄地があるから、その4分の1に太陽光発電設備を設置すれば県の全世帯の電力が賄えるということだ。発電コストは太陽光発電が海外並みになれば大丈夫。問題は夜間や雨天時をどうするかである。当面は東北電力などに依存するしかないが、蓄電池のコストが下がれば発電設備毎に蓄電池を設置することも考えられる。

かつて福島県は浜通りの東京電力福島第一、第二の原発で出力が910万キロワット、年間の発電量は稼働率70%として、年間558億キロワット時を発電する設備があったが、それは全て首都圏で消費するためのものであった。耕作放棄地につくる太陽光発電設備はその10分の1にもみたないが、地産地消の電力として県民が安心して使え農業の支えにもなる。東北電力は県内の売上の半分を失うことになるが、蓄電池や揚水式水力発電所を使った電力預かり事業を始めれば、送電線の使用料とともにその預かり手数料で利益をあげられる。もちろん東北電力や農家自身が太陽光発電事業者として参入することも可能だ。

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