日本エネルギー会議

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吉野博士の語ったこと

今年のノーベル化学賞に旭化成の名誉フェロー吉野彰博士が選ばれた。リチウムイオン電池というデバイスの開発が評価された。記者会見や雑誌のインタビューで吉野博士は、これまでの受賞者とは違い、電池開発の苦労話だけでなくリチウムイオン電池のこれからの使い方についてのビジョンを語った。

まず、リチウムイオン電池の性能、コストの見通しについて、いまは未完成なものであり世界中で猛烈な開発競争が行われていることから、これからも改良が進むことを開発者として予想した。次世代電池としてリチウムイオン電池以外にさまざまなものが候補に挙がっているが、自らが開発したリチウムイオンに対するこだわりは強いようだ。

次に博士はリチウムイオン電池の利用先をEVがメインになるとした。これはリチウムイオン電池がすでにほとんどのEVで採用されており、世界中でEVシフトが進むことから考えるとそのとおりだ。災害対策としてのリチウムイオン電池についても触れられたが、それを聞いて全電源喪失した福島第一原発の事故対応の中で通勤車両の鉛バッテリーを外して中央制御室に運搬して使おうとしたことを思いだした。あの時、駐車場にEVが並んでいたらどうしたかと想像してしまう。

吉野博士が一番強調したことは、リチウムイオン電池が再生可能エネルギーの短所である出力の不安定さをカバーする役割を果たす期待だった。日本でも北海道でメガソーラーにリチウムイオン電池をセットで建設する例が次々と出ている。電池の制御の難しさについて最も詳しい技術者がこのようなビジョンを語ったことは、この方式が現実的なものである印象を与えた。

ただし、リチウムイオン電池の対抗馬としてレドックスフロー電池がある。旭化成の商売仇の住友電気工業が、レドックスフロー電池の生産コストを大幅に引き下げる技術(電解液に高価なレアメタルのバナジウムを使わず、より安価な材料に変える)で、生産コストを現在の10分の1以下(1kwhあたり2~3万円)を最近開発したとの情報があるのでこの点は予断を許さない。

最後に吉野博士の「自然はまだ分からないことだらけ、科学はまだ自然現象の1~2パーセントしか解明していない」と述べたことが印象的だった。科学者としての謙虚さを表明したように思えるが、博士の笑顔からは99パーセントの未開の地が残っていて、楽しみはこれからだということを言いたいように私には見えた。

※参考

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  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
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