日本エネルギー会議

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変わりつつある日本のエネルギー事情(4)

福島第一原発の事故以降に原発の代替として石炭火力への依存度が高まった。燃料である石炭の輸入については価格、輸入先の国情ともに石油より安定的で、地域住民の反対も原発と比べれば少ない。環境アセスメントを通れば運転開始までそれほど難関はない。東日本大震災後、原発を欠いた日本の電力供給体制は石炭火力で救われたと言える。既設の石炭火力発電設備は約100基、発電容量は4000万 kWに上る。東日本大震災以降、50基の新増設計画が浮上し、8基が稼働済でさらに20基が着工している。今や日本では石炭火力はLNGとともに電源を支える大きな柱になっている。

石炭火力の最大の問題は、二酸化炭素の主な排出源になっていることで、高効率の設備が開発されているとはいえ、依然として他の電源に比べて二酸化炭素の排出は多い。建設にあたって環境省がアセスメントにおいて反対意見をつけても計画が止まることは少ない。ニューヨークの国連本部で開催された「気候行動サミット」に出席した小泉進次郎環境大臣は記者たちに火力発電をどうするか問われ「減らす」とは言ったものの、「どうやって」と聞かれて絶句した。

環境省が経産省に抵抗できずにいるのを尻目に、石炭火力は思わぬ形で強制退場させられそうな事態が発生している。というのは米欧の保険会社で石炭火力関連の損害保険の引き受けを停止する動きが相次いでいるからだ。世界中の大企業がESG(環境・社会・企業統治)を重視する中、金融業界が地球環境への悪影響で評判の悪い石炭火力への関与はリスクが大きいと判断しはじめた。 

日本ではあまり知られていないが、欧米では金融機関から融資を得られず、さらにチューリッヒ、アクサ、チャブなどの大手損保から損害保険の引受を停止され、石炭火力の閉鎖や建設中止の動きが広がっている。その代替としては発電コストが急落した再生可能エネルギーが勢いを増している。

最近、日本でも3メガバンクが石炭火力への融資を取りやめたり引き上げたりする動きがある。損害保険会社は世界中で再保険をかけるようになっているため、欧米の大手損害保険会社の方針は直ちに影響する。日本の損害保険会社も石炭火力の新規建設と運営に関して損害保険を引受けられなくなる可能性が高い。損害保険引受拒否は電力会社に対してだけでなく、炭鉱、設備メーカー、工事会社など関係筋全部に対して適用されるので、新規建設はもちろん既設の運転保修にも支障をきたすことになる。日本が依存を深めている石炭火力が突然死するリスクが現れたということだ。

このリスクを回避するには、石炭火力にCCS(二酸化炭素貯留装置)、CCU(二酸化炭素利用装置)を付けるか、石炭火力が発電している電力量をLNG、原発、再生可能エネルギー、節電などで代替するしかない。CCS、CCUについてはつい最近、北海道の苫小牧で日本初の貯留の実証テストが始まったばかりであり、コスト増にもなるため実用化するかどうかは不明である。

LNG、原発、再生可能エネルギー、節電についてもどれかひとつで代替出来るわけではなく、それぞれ最大限の努力をしなければ、全発電量の3割もの電力をカバーすることは不可能である。世界から非難を浴びながら石炭火力を暫く継続するにしても、国が金融機関に代わって資金や損害保険を支援してやらねばならない。日本は思わぬかたちで、戦後最大のエネルギー危機を迎えようとしている。

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