日本エネルギー会議

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日本の行動様式と考え方(1)

元政府事故調査・検証委員会委員長畑村洋太郎は最近の朝日新聞のインタビュー(2019.11.18)で「世界中の知識や科学を総動員して日本の行動様式や考え方にある欠陥、欠点を改めるべき時期だ」と指摘している。まったく同感だ。畑村氏は福島第一原発の事故のその後の対応が不十分なことを案じておられるに違いない。

原子力界で働いていた私の経験から、具体的にはどのような欠陥、欠点があったのか、またそれを改める方法があるのかを考えたいと思った。いくつか思い浮かぶなかで、今回は「周囲、他人に気を使い過ぎる」という日本の行動様式について取り上げたい。何故、周囲や他人に気をつかうかと言えば、集団内で軋轢を生じることで全体の効率が悪くならないようにし、集団の目的が首尾よく達成出来るようにするためだ。だが、そのための手段が目的化してしまうために、却って目的が達成出来ないことになっている。

他人に気を使うことで、尖った意見はもちろんのこと、正しい意見、言わねばいけない意見も自主的に封じ込めてしまう。欧米ではそうであってはならないと教育されているが、日本人はひたすら場の空気を読むことに専念し、リーダーと目される人が意見を言うのを待つフォロアーに徹しようとする。ニッサンのデザイナーがイタリアに行って仕事をしたとき、午前中に喧嘩腰の議論をしていても、昼休みになれば仲良く食事に行くのに驚いたという話を雑誌で読んだことがある。日本人の場合は陰湿である。

この「周囲に気を使う」を科学や技術の世界に持ち込まれるとなんら進歩が起きないどころか、とんでもないことになる。出る杭は打たれるが、それが正しく評価されることなく、集団としての規律を乱すという理由をつけて異論を封じ込めてしまう傾向が日本の社会にある。

他人や周囲に気を使う理由は「和を持って貴し」だというのは表面的観察に過ぎない。実は、気を使う本当の理由は「自分が居心地良い場所にいたいから」である。自分が協調性のない変わり者だと思われたくない、上の地位の人や仲間から功名心があると思われたくない、もし自分の意見が間違っていたと後で困ると一瞬のうちに考えてしまうからだ。自己責任を負う勇気もない。みんなで渡れば、失敗しても自分だけ責任を追求される心配はない。そのくらいはしかたがないと諦める。

対策はまず学校教育、新入社員教育で自分の意見を持つこと、それを堂々と発表することを身につけさせることだ。欧米で教育を受けた日本人は自分意見を持ち、発表することが欧米人と変わらずにできている。
さらに提案がある。それは最近進歩の著しいIT技術を使って、会議の参加者全員が議事進行係の指示で同時に意見をパソコンに入力することにし、その場で参加者が共有する方法の採用だ。これらの意見を記録に残すことで、後々検証、情報共有にも使える。紙でやることは不可能だが、パソコン上であれば情報量は問題ではなく、共有も一瞬で出来る。

この提案は突飛なようにも思えるが、それに近いことは既に航空業界では行われている。それはフライトレコーダーの設置の義務付けだ。フライトレコーダーによって事故原因の究明が容易になり、どれほど空の安全につながったかを考えるとよい。最近では車のドライブレコーダーが普及して、あらゆる危険な運転や事故が記録されて大いに役立っている。失敗に向き合うためにも会議におけるこの新しい発言と記録方法を採用してはどうだろうか。

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