日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

桜を見る会と施設見学会

政府主催の「桜を見る会」に大勢の地元後援会員を招いたことで安倍首相が野党から攻撃されている。税金で実施されている会を私物化したという理由だ。また、前日の前夜に行われた後援会は会費を取ったものの、政治資金報告書には記載がないことが問題にされている。政治家の後援会活動や支援者に対する金品の支給、便宜については従来も法律違反ではないかと問題になり何人もの大臣や議員が辞職に追い込まれている。

電力会社は住民などに原子力に関する理解を深めてもらうためいろいろな活動を行ってきた。原発の地元の諸団体に対して送迎バスを提供して自社の原発の施設見学会を行うのはもちろん、安倍晋三後援会のように、職員が同行して他県の原子力施設見学会も行い、その後には観光もする一泊旅行をやってきた。地元の団体はさまざまであり、消防団、婦人会、町内会、老人会、同窓会、趣味のサークルなどが対象だった。

一般の企業でも個人、団体相手の工場見学会は行われており、専門の案内係をつけてガラス張りの通路から作業を見られ、試食や試飲も出来るようにして、お土産として製品を出す場合もある。団体であればバスによる送迎を行うところも多い。ビール、ウィスキー、かまぼこなどの工場は観光スポットとしても人気だ。しかし、他の同業者の工場見学に連れて行くようなことはない。この費用は製品のコストになるので、どこまでやるかは宣伝効果との見合いになる。

電力会社の場合、過去には行き過ぎと思われることも散見された。例えば、同じ団体に繰り返し地元以外の原子力関連施設見学を実施していた。行き先が県外になれば一泊のバス旅行となり、夜は旅館で懇親会となる。バス代など費用の大半を電力会社が出してくれるから、団体としては毎年行きたくなる。地元対応にあたる電力会社の担当者は行き先の観光地など調べて旅行のルートについていろいろ頭を悩ましたものだ。

以前、親しくなった福島県の元消防団長は、原子力関連の施設見学会のことについて「もう行くところがないほど全国各地の施設見学に行った」と言っていた。ある老人会は毎年地元の原発見学を希望してきたが、実は貸切バスを提供してもらいたいからで、原発見学はさっさと済まして目的の場所までバスで送ってもらいたいのが本音だった。

電力自由化以降は一般の企業のように、PR効果があると思えば電力会社がいくら負担しても構わないが、地域独占、総括原価方式の時代に、株主や消費者など他のステークホルダーに説明もなしに、しかも地元の一部の人たちに集中して恩恵を与えることは「桜を見る会」と同様にまずかったのではないか。

電力会社が地元の応援団作りためのバス旅行を行うようになると、参加者は電力会社に借りが出来たようになり、電力会社に対して一定の距離をおくことが難しくなる。こうした関係は「原発が事故トラブルを起こした際に厳しい態度を取れるのか」、「説明会などへの動員を依頼されたときに断れるのか」などと外部からの批判の的となりやすい。
施設見学会は政府の「桜を見る会」を見習い、一定の基準をつくってその範囲で実施することで公平さを維持し、内容も公表して各ステークホルダーの納得を得られるようにすべきである。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter