日本エネルギー会議

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福島の復興を考える(52)

下のグラフは福島県のGDPの内訳であるが、6割をサービス業など第二次産業が、3割を建設業や製造業など第三次産業が占めている。

農業、林業、水産業、鉱業の第一次産業のウエイトは極めて少ないことがわかる。各産業に従事する人数もほぼこれに見合ったものであり、第一次産業従事者は全体の1割に満たない。第一次産業の影の薄さは驚くものがあるが、全国で見ても地方はどこも似たようなものだ。

日本は戦後工業化が進展、さらに高度成長を経て商業、金融、保険、電気通信、サービス業などが著しく拡大し、それに従事する人も増えたのである。グラフを見て驚いた原因は、第一次産業がまだ大きな存在であり、雇用の多くが第一次産業に関連したものであったことの記憶があること、地方といえば田や畑が広がる風景、山里や山林が国土を覆っている風景、あるいは周囲を海に囲まれてほとんどの県が海岸を持っていることなどイメージが強いからである。

福島県を東日本大震災と原発事故から復興させようと考えた際にも、このイメージが影響している。政治家も役人もメディアも住人も日本や福島県の経済活動のほとんどが第二次、第三次産業で行われているという認識を持てないでいる。復興に使う予算を見てもそれは言える。例えば、富岡町の2018年度決算書を見ると、200億円の歳出のうち、農林水産業の振興費として10億円が投じられている。内訳は農業に9億6千万円、林業に2千万円、水産業に1千万円。これに対して商工業の振興としては全部で13億円である。富岡町は新たに6号国道沿いに工場団地を造成して企業誘致に努めているがまだ7分の1が埋まっただけだ。震災前に町内にあった商店や工場などの再開はほとんど進んでいない。ちなみに200億円の歳出の49.9パーセントは総務費だ。(総務費とは、全般的な管理に要する経費、徴税費や選挙費、職員の人件費などのこと)

テレビや新聞が伝える復興の姿も、第一次産業1割、第二次産業3割、第三次6割というGDP比ではなく、第一次産業を大きく取り上げる傾向がある。これは視聴者の持つ第一次産業が栄える地元のイメージに合わせているのであろう。都会だけでなく地方でも、ほとんどの人が第二次産業、第三次産業で生計を立てているのだが、田畑や里山、山林がきちんと整備され、漁船が大漁旗をなびかせている美しいイメージが日本人の心に深く定着している。

先の台風19号で阿武隈川が氾濫し、郡山市の工業団地全域が冠水、日立製作所の事業所が復旧を諦め300人を配置転換するなど足元で虎の子の第二次産業がまずいことになっている。福島県の復興はイメージだけではなく、実際に工場や商店が元通りに生産が戻りGDPが伸びるように計画が作られ、予算が配分されるようにしなくてはならない。

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