日本エネルギー会議

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バイオマス発電あれこれ

皇居・東御苑で開催された大嘗宮の一般参観は今月8日に終了。18日間で約78万2千人が訪れたが、宮内庁はその大嘗宮の解体後の木材について、バイオマス発電の燃料に再利用すると発表した。伊勢神宮の遷宮に伴い出てくる木材は全国の社の建設に再利用されるが、大嘗宮は無乾燥の部材や、接続部にくぎ穴や溝などがあり、住宅建材には不向きなことから、燃料として再利用することにしたという。大嘗祭とバイオマス発電という異質な組み合わせは意外だった。調べてみると最近はバイオマス発電に関する新たな情報がいろいろ見つかった。その中のいくつかを紹介しよう。

(最近の状況)
エイブルエナジー(福島県の大熊町、関西電力、九電工が出資する合同会社)国内最大級の木質バイオマス発電所を福島県いわき市の好間工業団地に2020年1月から建設する。運転開始は2022年4月を予定している。出力11万2000キロワット、年間の総発電量7億7000キロワット。全量を東北電力に売電。燃料の木質ペレットは米エンビバ社から輸入し、市内の小名浜港に新設する倉庫に保管する。石炭火力と比べて二酸化炭素排出量を年間78.7万トン削減出来る。70人の雇用を見込み、半数以上を地元採用する。

三菱商事、日本製紙、中部電力は静岡県富士市の日本製紙工場内の石炭火力発電所(2016年9月運転開始)をバイオマス発電設備に転換する。これは日本初の試み。出力は11.2万キロワットで国内最大級。2022年4月から石炭から木質ペレット専焼になる。IHIが木質ペレット粉砕し、微粉化する仕組みを実用化した。北米から年36万トンのバイオマスを輸入する目処が立っている。転換により発電量は20パーセント減少し年間6億キロワット時となるが、二酸化炭素排出量は年間67万トン減少する。国内金融機関3行から融資を受けた。

御前崎港バイオマス発電事業は中部電力、鈴与商事、三菱電機が出資。2021年4月着工、2023年7月運転開始予定だ。海外から木質ペレット、ヤシ殻を輸入して燃料にする。将来は県内産未利用材を活用予定。出力は7万4950キロワットで、年間5.3億キロワット時発電する。中部電のバイオマス発電所は御前崎港バイオマス発電所で5基になる。同社は電源構成に占める再生可能エネルギーの割合を高めるため、同分野に積極投資している。

シン・エナジーは、和歌山県有田郡有田川町で900キロワットの木質バイオマス発電事業を開始する。2020年5月着工し、12月に発電開始予定。資金は地元金融機関の融資と林業関係者から。発電設備はオーストリア製の熱電併給装置を採用し、出力は450キロワット×2。燃料には地元の未利用材のみを採用。年間約1万トンの木材をチップに加工して使用する。電力は関西電力株式会社へ全量売電。発電の際に生じた熱はチップ製造工場へ供給し、チップの乾燥に利用するほか、熱利用施設や工場など近隣の熱需要家にも供給する。本システムの発電効率は31%で、熱利用も含めると総合エネルギー効 率は最大で82%になる。

丸紅の事業会社である敦賀グリーンパワー株式会社は2017年7月、福井県敦賀市で2015年から建設していたバイオマス発電所の商業運転を開始した。木質チップを主な燃料とし、出力は37メガワット、年間発電量は一般家庭約7万世帯の電力消費量に相当する。発電した電力は丸紅新電力の電力小売り事業の新たな電源として活用する。

イーレックス株式会社は大分県佐伯市で国内最大級バイオマス発電所を2017年1月に竣工した。燃料はパーム椰子殻で、定格出力は国内最大級の5万キロワット。

JFEエンジニアリング株式会社を含む6社が設立した株式会社グリーンエナジー津が三重県津市の同社津製作所構内に建設したバイオマス発電所が2016年7月商業運転を開始した。循環流動層ボイラを用いてパームやし殻や木質チップなどのバイオマス燃料を燃焼し発電。燃料は地元の協力を得て地域資源である未利用間伐材等を積極的に利用する予定。電力はFITを活用し、横浜市のアーバンエナジーなどに売電する。

ジャパン・リニューアブル・エナジーは2017年6月、茨城県で「JRE
神栖バイオマス発電所」を起工した。燃料は建築リサイクル材と山林材で、グループ会社の株式会社エコグリーンホールディングスから安定調達する。出力は2万4千400キロワットで、年間発電量は約2億キロワットアワーとなる。

東芝は2017年4月、同社の子会社である株式会社シグマパワー有明が運営する福岡県大牟田市の三川発電所の設備をリニューアルし、同社初のバイオマス発電所として営業運転を開始した。同発電所は、東芝グループが運営する初めてのバイオマスを燃料の主体とした発電所になる。同発電所は、2005年に石炭を燃料とする発電事業を開始し、2008年からは石炭に木質バイオマスを混合させた混焼発電を行っていた。設備更新により、出力は5万キロワットとなり、主燃料として主にインドネシアから輸入する年間20万トンのパーム椰子殻を使用する。二酸化炭素排出量をこれまでより年間約30万トン削減できる。さらに環境省の「環境配慮型CCS実証事業」として、大規模な二酸化炭素を分離・回収する秘術を実証する設備を2020年に完成する予定だ。

(小規模多数が基本となる)
このように続々と立ち上がっている我が国のバイオマス発電であるが、現時点ではバイオマス発電が我が国の総発電量に占める割合はまだ1パーセント程度である。(本文末尾の日本のバイオマス発電所の一覧表を参照)
発電所の数は多いが、規模は小さく一つのバイオマス発電所が作り出す発電量は他の再生可能エネルギーの発電所と比較すると小規模な設備が多く、1キロワット程度の小規模発電所が9割近くを占め、やや大型の設備でも1000キロワット~2000キロワットの発電所が多い。最近ようやく数万キロワット以上のバイオマス発電所も建設されるようになり、中には11万キロワットのものも造られるようになった。それでも石炭火力やLNG火力と比べると出力は一桁小さい。これは燃料供給の問題があるからだ。バイオマス発電所はその地域で燃料を調達出来る規模のものを各地に数多く建設し、その電力を地域で消費するのが基本となるだろう。ただし、燃料調達見通しがついて既設の石炭火力発電所をバイオマス発電所に転換することになれば数十万キロワット程度のバイオマス発電所も出現し、全供給に占めるバイオマス発電の割合も増やすことが出来よう。

(バイオマス発電のメリット・デメリット)
バイオマス発電には当然ながらメリットとデメリットがある。最大のメリットとしては、資源を有効活用出来ることだ。地域には森林からの間伐材などの他、家畜の糞をはじめ、家庭ごみや食品加工から出る廃棄物、また木材の廃材など、通常であれば廃棄してしまうものを活用出来る余地が数多くある。
またバイオマスエネルギーが使用されれば二酸化炭素を排出する。しかし、排出する分量はもともとの原料である植物が光合成をした際に取り込んだ二酸化炭素の量だけであり、全体としては二酸化炭素は増加しない。石炭火力のように環境保護派からも敵視されない。
デメリットについては国土の狭い日本では資源を確保することが難しく、大型のものになれば、パーム椰子殻などバイオマスの輸入に頼らざるを得なくなる。輸入コストがかかるため発電コストが高くなる。運搬するため船舶を使用すれば二酸化炭素がその分増えることにもなる。また、海外の情勢に供給量や価格が左右されることになる。出来ればより近い地域からの調達が望まれる。その他、バイオマス燃料確保のために、森林伐採や、農家がバイオ燃料のために食糧生産を減らすことになる恐れがある。日本が途上国などからバイオ燃料を輸入するにしても、輸出国とのウイン・ウインでなくてはならない。

(今後の見通し)
バイオマス発電のための燃料となるものは次のようなものである。

国内ではこれらの資源の多くが廃棄され、そのための費用がかかっている。例え小規模であっても、これらをバイオマス発電の燃料として有効利用すべきである。都市のゴミ焼却場では、まだまだ発電設備を持たないところが多い。都市のゴミは永久的なバイオマス発電の燃料供給源である。従来は高効率利用が困難であった木質バイオマス、廃タイヤ、廃プラスチック、スラッジなどの多様な非化石化燃料から電気、蒸気を作り出す技術も実用化に向けた開発が進んでいる。これによって輸入に依存するバイオマス発電から少しでも脱却することが望まれる。
我が国の火力発電の歴史は石油から石炭あるいはLNGへの燃料転換の歴史でもある。地域に根ざしたバイオマス発電の成長を期待するとともに、現在、発電量の三分の一弱を賄いながらも逆風の吹いている石炭火力発電所が、いかにしてバイオマス発電所に転換して生き残って行くかに注目をしたい。
(参考)日本のバイオマス発電所の一覧(2018年現在)

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