日本エネルギー会議

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兵糧攻め

戦国時代の合戦には数か月かかるような戦いもあったが、戦い続けるために欠かせなかったのが兵糧だ。長期戦の場合は食料の備蓄こそが勝敗を分けた。兵士が食べる1日当たりの量はだいたい一人米六合前後、水一升、塩一勺、味噌二勺であったといわれている。大きな城では大変な量になる。

戦国時代、味方の犠牲を抑える戦法として「兵糧攻め」があった。城外から城中への兵糧を絶つことにより開城に追い込む戦法で、秀吉が得意としていた。秀吉は金の力で食料を買占め、海上を封鎖し、土塀等を築いて城を包囲して、
城外からの兵糧搬入を徹底的に阻止した。城内は目を覆うような「飢餓地獄」であったようだ。 城内の悲惨な情況に絶えかねて城は降服する。城兵の助命と引き換えに城主は切腹した。

現在、各電力会社は原発の再稼働に向けて原子力規制委員会の審査を受け、さらに合格した後も地元自治体の合意を取らなくてはならない。それとともに巨額の追加工事を計画通りに実施しなくてはならない。こうしてようやく再稼働にこぎつけた原発も原子力規制委員会から新たな指示が出れば追加工事となり、それが申請した期間に間に合わなければ原子炉停止が命じられる。加えて裁判所からも「運転を認めない仮処分決定」がしばしば下される。

既に東日本大震災・福島第一原発の事故からまもなく9年が経過しようとしている。この間、廃炉をしない原発では審査合格や地元了解を待ちつつも、原発そのものの維持管理を続けている。1基当たり社員は運転員、保修員など約300人、メンテナンスのための常駐協力会社約300人は最低でも確保しているはずだ。人件費だけでも一人平均年間600万円(賃金プラス厚生費)で、人数分としては年間36億円が必要となる。これには本社の原子力部門の人件費等は入っていない。ついでに言えば、廃炉を決定した原発も廃炉工事が本格化するまでは、電気事業設備として運転体制などを縮小したり廃止したりすることに国はなかなか許可しない。

1ワットの電気も出していない原発が1基あれば、電力会社は現場の人件費だけで9年間に最低324億円を出費したはずだ。この先、本格的に稼働出来るまで何年かかるのか。各地の原発は原子力規制委員会、自治体の首長・議会たちに兵糧攻めにあっているようなもので、電力会社は体力を消耗し続ける。現場の運転員などもどんどん経験不足になり、新人は実力の涵養が出来ない。そんなことに原子力規制委員会はお構いなしだ。委員長は電力会社の財務を心配することは委員会が最もやってはいけないことだと思っておられるようだが、城内の人々が兵糧攻めでフラフラになれば、それこそ安全が保てなくなるのではないか。

自治体の首長・議会は住民の顔色をうかがいながら慎重な姿勢を崩さない。無為な時間の経過は電力会社にとって最大の敵であり、次々に訴訟の矢を放つ反対派は高みの見物だろう。支持率が下がるようなことは、後々いくら国民の負担が増えようとも一切やろうとしない政権の前に、城主は城を解体し自らは切腹せざるを得なくなるだろう。

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