日本エネルギー会議

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石炭火力ゼロへの挑戦(4)

前回、他の電源を現在の2倍のシェアにするのに対して風力発電だけを3倍としたのは、日本が風力発電の開発に関して海外に比べて大きく出遅れ、今後伸びる余地が十分に残されていると考えたからだ。さらに風力発電について出遅れている要因、課題対応、状況変化、今後の展開予想、最近の大型開発事例を追加することで、現在の風力発電のシェア0.7パーセントを2030年に3倍の2.1パーセントに出来るという根拠を示したい。

(1)風力発電が出遅れた要因
・長期にわたる環境アセスメント手続きへの対応、騒音やバードストライク、環境保全など地域での様々な社会的合意形成をするために、従来は多くの時間を必要とした。また、洋上の風力発電について、一般海域は長期の占用を行うための統一的ルールが整備されていなかった。さらに各都道府県の条例による運用では、許可される占有期間が3~5年と短く長期の風力発電事業を計画することは難しかった。

・再生可能エネルギー開発を活発化するためFITが導入されたが、同じ程度の買取り料金では土地の確保が簡単に出来、設備が簡単な太陽光発電に民間投資が集中した。また、日本の風力発電設備の価格が欧米に比べて高く、太陽光のような利益が期待出来なかった。

・風力発電の適地は大消費地から距離が遠く、電力会社は接続条件として送電線接続費用や不安定な電力として費用のかかる蓄電池の併設などを要求した。

・日本は国土が狭く陸上型では建設出来る場所が限られていた。洋上着床式に適した遠浅の海岸も少ない。洋上については十分な調査が行われていなかったことから日本を取り巻く海域の大きなポテンシャルが認識されていなかった。

・強風による鉄塔の倒壊や雷による翼の破損などの事故があり、対策が難しかった。台風の心配もあった。

(2)これまでなされた課題対応、状況変化
・新たな法律が作られ、洋上風力発電の事業計画が策定しやすくなった。経産省および国交省が、農水省や環境省と協議し、一般海域の中から「促進区域」を指定。公募占用指針を策定。その後、国交相と経産相が発電事業者を公募し、選ばれた事業者には、最大で30年間の占用が許可されるようにした。

・沿岸から近い港湾区域に利用について、2016年に港湾法が改正され、港湾管理者が公募を通じて洋上風力発電の実施計画を認定できるようになり、発電事業者は港湾区域内の占用許可を申請しやすくなった。

・2014年度から固定価格買取り制度に洋上風力の買取価格が新設されたことで、大規模な開発計画が全国各地に広がった。陸上の風力発電所の出力が平均2000kwであるのに対して、洋上の風力発電所の出力は平均5000kwと大きい。調査が進んで洋上のポテンシャルの大きさが理解され、どこが適地であるかもわかってきた。

・太陽光発電はメガソーラーの適地が少なくなり、住宅用に開発の重点が移りはじめたため、大型電源として風力発電が見直された。再生可能エネルギーが増えてくると、夜間も発電が期待出来て稼働率が良い風力発電が選択されるようになった。

・欧米で風力発電の技術が進歩し、風車の巨大化、性能向上で発電コストが大幅に下がって火力発電と競争出来るようになってきた。洋上も浮体式、着床式ともに技術が急速に進歩を遂げた。
(事例)
長崎県五島市と五島フローティングウィンドパワー(戸田建設所有)は2016年3月に日本で初めて浮体式の洋上風力発電所「崎山沖2000kw浮体 式洋上風力発電所」の営業運転を開始した。五島列島で最も大きい福江島に5キロメートルの海底ケーブルで電力を供給する。年間の発電量は613万kwhになる。

・大手電力会社以外にも大手重電メーカー、ゼネコンなどが技術力、資本力を持つ有力企業が風力発電事業に本格参入しはじめた。

・系統の空き容量について計算方式を変更して空き容量が増えるケースが多くなった。大型蓄電池の性能が向上しコストが下がり、蓄電池を併設しても経済性が確保出来るようになった。また、北海道と東北の連係線が完成し、首都圏方面に送電出来るようになった。
(事例)
北海道電力が接続条件とした「風力発電設備の出力変動緩和対策に関する技術要件」を満たす初めての風力発電所を、東急不動産と日本風力開発が2019年4月、北海道松前町で運転を開始した。出力40、800kw。年間発電量約1億kw。蓄電池は日本ガイシ製のNAS電池。東急不動産は、再生可能エネルギー事業として全国6カ所の風力発電事業、36カ所のメガソーラー事業、1カ所のバイオマス発電事業に取り組んでいる。

・自治体に建設場所の近くに製造、組立、運搬基地などの地域産業興しの期待が高まってきた。漁業関係者の調整も自治体が行うようになった。

・電力会社がディーゼルに代わる離島の電源に風力発電を採用することを考え始めた。風力発電の電気をRE100で再生可能エネルギーを要求する顧客に向けるようになった。

(3)今後、どのような展開が予想されるか
・国は2030年度までに5区域を洋上風力発電事業の促進区域として指定する方針。これにより、陸上と比較して規模が大きい洋上風力発電の導入が進むと考えられる。

・大型化と洋上への拡大によりさらに発電コストが安くなることで、他の電源に対抗出来るようになる。特に日本では太陽光発電の伸びが鈍化するのを補って二酸化炭素フリーの電源としての期待が高まる。

・既に福島沖、房総沖などの試験機で台風にも耐えることがわかったが、更に大きな台風への強靭化対策が取られる。洋上からの超伝導海底ケーブルによる送電技術あるいはその場で水素エネルギーへ変換する技術進歩が期待される。

・今後、大手電力会社の本格参入に加えて大手メーカー、ゼネコン、新電力の参入が増えると思われる。外資の参入も予想されるが、日本の電力会社、商社などが海外の風力発電事業に進出することもあり得る。

・洋上風力発電所のためのタワー、風車、発電機などの製造、海上輸送、建設、メンテナンスなどの基地を現地近くの港湾につくり地場産業化を図る動きが出てくると思われ、経済波及効果と雇用が期待されている。

(4)最近の大型開発事例
・レノバ(太陽光発電事業)、エコ・パワー(風力発電事業)、JR東日本3社が共同で秋田県由利本庄市(ゆりほんじょうし)の沖合で、長さ30キロメートルにわたって国内最大の洋上風力発電所(着床式)を建設する。
風況調査や環境影響評価を2020年度まで実施。2021年度から建設工事に入る。工事期間は5年、2026年度に運転開始を予定している。出力は56万kw。風車は100基以上になる。年間発電量は17億kwh。

・日立造船など10社の連合体
連合体は新潟県村上市の沖合1~2キロメートルの海域に22万kwの洋上風力発電所(着床式、大型風車44基)を計画している。2020年4月に着工、2024年度の運転開始を目指している。
年間の発電量は6億7000万kwh。

・東京電力
東京電力ホールディングスは2013年から実証実験を行っていた千葉県銚子市の南沖合の洋上風力発電について、2019年1月からFITを利用した商用運転を開始した。同社初の商用洋上風力発電所となる。風車は三菱重工製、出力は2万4000kw。同社は、再生可能エネルギーの主力電源化に向け、今後、洋上風力の開発を進める方針で、将来的に総開発規模を200~300万kwを目指す。2018年11月より3ヶ月間、千葉県銚子沖、旭市沖で海底ボーリング調査を、銚子市沖、旭市沖、匝瑳(そうさ)市沖、横芝光町沖で音波探査を行っている。

・中部電力グループのシーテックと三重県津市・伊賀市
両者は共同で三重県内の高原で「新青山高原風力発電所」を2017年3月に運転開始した。風車が40基あり出力は8万kwと国内最大。年間の発電量は1億5千万kwhで、洋上風力発電と比較するとスケールはやや小さい。
中部電力グループは青山高原に5つの風力発電所を展開しており、合計すると出力は15万2000kwにのぼる。

・電源開発(Jパワー)
電源開発は秋田県南部の由利本庄市で、2018年1月「由利本荘海岸風力発電所」の運転を開始した。風車7基で出力は1万6000kw。年間の発電量は3500万kwh。電源開発は全国各地に風力発電を建設し、これで22箇所となった。全出力は445MWとなった。現在も北海道せたな町で23箇所目の5万kwの風力発電所を建設中だ。

以上、紹介した最近の開発事例と進行中の計画は、いずれもこれまでになく大規模なものである。数十万kwのウインドファームが2箇所立ち上がると年間発電量は陸上の火力発電所1基分に相当する。(稼働率が半分程度のため)
洋上風力はまだ着床式がほとんどであり、今後浮体式が登場すれば、日本の領海内の膨大なポテンシャルが活かされる。

2018年12月末時点で国内の風力発電の累積設備容量は371万kwで、2030年度目標1000万kWの約37パーセントに達している。洋上風力が本格化すれば残り63パーセント(629万kw)を2030年までの12年間で建設することは充分に視界に入ってくる。送電問題の取り組み、安定化のための蓄電池開発があれば全供給に占める風力発電シェア3倍(2018年の0.7パーセント⇒2030年に2.1バーセント)は可能だ。

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