日本エネルギー会議

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風力発電並みの原発設備利用率

原子力産業新聞によると2019年の原発の設備利用率は21.4%だった。原発の再稼働が出来ないうえに、再稼働した原発も司法判断で運転停止したりした影響で昨年は風力発電並の低い設備利用率になった。
設備利用率とは、一定の稼動期間中(一般的には年単位)に得られた発電量が、その発電設備が仮に365日100%の出力で発電し続けた場合の発電量に比べてどのくらいだったかという意味だ。ちなみに稼働率は出力に関係なく何時間動いていたかである。2019年の関西電力高浜3号機が通年稼働で設備利用率が105.2%だったことは大いに評価すべきだろう。今はやりの太陽光発電は夜間、雨天に発電しないため設備利用率は10パーセント台で、これが太陽光発電の泣き所だ。

従来、原発の設備利用率は欧米、韓国では90%台に達し、これに対して日本は10から20ポイント差をつけられていた。主な原因はほぼ毎年、定期検査のために3ヶ月近くも停止するためだと言われていた。日本の原発は設備利用率80%なら良い方だった。実際には大きな地震や不祥事、改造工事なども加わり、なかなか欧米のトップクラスには追いつけなかった。設備利用率は発電コストに直結するために当時は各電力会社の最重要課題であった。

2011年の福島第一原発の事故後に国内のほとんどの原発が停止したため設備利用率は一気に下がった。その後は新規制基準に合格した原発が少しづつ再稼働したが、日本全体の原発の設備利用率はなかなか上がらず、今も低いままだ。昨年、東京電力福島第二1~4号機と九州電力玄海2号機が運転終了となり、国内の原子力発電所は計33基、3,308.3万kWとなった。廃炉が進むと対象となる原発が少なくなり設備利用率は自動的に高くなるが、それは数字の上の話だ。もともと原発は設備利用率が高く安定した発電が出来るのが長所であったが、風力発電並の20%台ではこの長所がまったく発揮できない。宝の持ち腐れとはこのことだ。

風力発電の経済性を原発と比べて見る際に、設備利用率は大きなポイントになる。下表では原子力発電は設備利用率が70%、風力発電は陸上20%,洋上30%となっている。欧米のように原発の設備利用率が90%台で、風力発電の30%の3倍なら原発の競争力は十分にある。だが、原発の設備利用率が風力発電並であれば話は違ってくる。

風力発電所の建設費が明らかになった例を取り上げて原発との比較をしてみよう。株式会社シーテック(中部電力のグループ企業)が発表した三重県にある最新の陸上風力発電所(風車40基で構成)で計8万kWの発電能力を有する風力発電用風車と変電所の建設費用は約200億円だ。もし10倍の80万kwの設備だとすると建設費用は2000億円になる。設備利用率が原発の2分の1とすると、同じ発電量を出すためには風力発電の設備をさらに2倍して4000億円となる。これは、福島第一原発の事故以前の標準的な80万kw級原発の建設費とほぼ同額である。

原発は風力発電に比べて稼働年数が倍の40年あるが、燃料費や多額のメンテナンス費用がかかる。廃炉費用も高レベル放射性廃棄物の処分費も増える傾向にある。一方、風力発電は不安定な出力を平準化するための蓄電池や連係線の建設費を考えなくてはならない。風力発電の場合は風況が設備利用率に大きく影響するのも原発との違いである。そのため、設備利用率の高い洋上風力発電が主力になるだろう。環境影響や設置場所確保の観点からも洋上が有利だ。風力発電所、蓄電池の建設コストは年々着実に下がっており、欧米では両方合わせた発電コストもかなり下がっているようだ。これからは原発と風力発電のコスト競争は厳しくなる。

下表はコスト等検証委員会が2013年に提出した報告を基に作成したもの。2030年時点の発電コスト予測を算出するために、各発電設備における設備利用率と平均的な稼動年数を示したもの

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