日本エネルギー会議

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原発事故の影響(1)

もうすぐ福島第一原発の事故から9年が経過する。このくらい長い時間がたつと事故が地元にどのような影響をもたらしたのかが見えてくる。

事故の発生とともに国から原発周辺の自治体の住民に避難指示が出され、多くの人が県内外に避難をした。その後、避難指示解除により再び元の住居に戻った人もいるが、多くは避難先などに住居を移した結果、県内の人口分布に大きな変化が生じた。原発周辺の自治体からは人が去り、いわき市、郡山市、福島市、会津若松市などの都市部に集まった。自治体は住民を帰還させようと役場の帰還、インフラ整備や医療機関、商業施設の再開など懸命の努力をしているが、原発周辺の住民のほとんどが既に避難先に定着してしまった。今、避難指示解除になった原発周辺の自治体には高齢の元住民と廃炉や除染で他県から来た人たちが住んでいる。その数は平均すると元の人口の1~2割程度だ。帰還者で一番数の多い高齢者から亡くなっていくので、他県から来た新住民の比率が徐々に増えていくと考えられる。

一方、避難先で生まれた世代にとっては、原発周辺の地域は自分の生まれ故郷ではなく、両親や祖父母の故郷である。避難した親たちが高齢になり、リタイアするとともに生まれ故郷で余生を過ごそうとするかもしれないが、その数は限定的であろう。今、帰還が進んでいない地域では、家も庭も荒れ果てて、国の金で取り壊しの手続きをする人がほとんどである。このような状況では、医療機関や商業施設を維持するのはだんだん苦しくなるはずだ。

原発周辺の地域以外の県内の各市町村も人口減少、高齢化が激しさを増すばかりで、なんとか地域から人が出ていかないようにしているため、そこから原発周辺に人を呼び込むことは難しい。大都会から田舎暮らしを希望する人もいるが、原発周辺を選ぶ人はまずいない。原発周辺およびその外側の山間部では里山が野生動物の楽園になりつつある。住民は自家菜園や家に侵入しないようにするため鉄柵を敷地に張り巡らしているので、サファリパークの中に人間動物園の檻があるような状態だ。

最近、福島第二原発の廃炉の予定が示され、今後40年以上にわたる工事が始まることがわかった。これと福島第一原発の廃炉、県が力を入れている福島イノベーションコースト構想(ロボット、再生可能エネルギー、ロケットなどの研究開発事業)の三本柱がこの地域の主要な産業になる。他にも各自治体が工業団地を整備して新たな製造業の誘致をしているが、雇用力は大きなものではない。結局、住民の増加は三本柱の研究、建設、製造の雇用力に依存することになる。除染については原発周辺以外の地域の除染土壌の中間貯蔵施設への搬入はほぼ終了しかけており、これから除染は原発周辺に重点が移って行き、あと10年ほどで除染の仕事はほぼなくなるはずである。

こうした産業はほとんどすべて国、県、東京電力からの発注に依存しており、公共事業的な性格が強く、地域の経済は国などの予算次第である。浜通りと呼ばれるこの地域は、原発が誘致された時代から経済的に東京電力の原発事業に大きく依存してきたが、それを今後は国と東京電力が引き継いでいくことになる。

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