日本エネルギー会議

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石炭火力ゼロへの挑戦(7)

石炭火力をゼロにするための条件として原発、再生可能エネルギーの倍増と節電・省電の可能性について検討している。今回は2030年までに電力供給シェアにおいて原子力4.7%を9.4%に倍増できるかについて。
福島第一原発の事故後、原発は全面的な停止に追い込まれ、新たに定められた規制基準による安全審査に合格することを求められた。各電力会社は残りの運転期間と追加工事費などを考慮し、追加工事をして安全審査の申請をするか廃炉するか経済性の判断を迫られた。その結果、現時点では次の表のような状況になっている。

既に再稼働した9基に加え、設置許可済みと安全審査中の18基のなかから、半数が再稼働すれば、目標をクリア出来る。廃炉を決めたのは出力の小さい原発ばかりで、再稼働の可能性のある原発は大型のものである。実際には改造工事などが計画されており、2030年までの10年間に9基を再稼働することは物理的には可能と思われる。しかし、設置許可済のものであっても現在まださまざまな理由で再稼働出来ていないことを考えると、10年間は十分に余裕がある期間であるとは言えない。再稼働は技術的な要因だけではなく、次のような政治的、経済的、社会的な要因で達成出来ない可能性があるからである。

(1)地元の合意
電力会社は地元自治体と安全協定を締結しており、再稼働について協定は紳士協定であり、法的根拠はないとの立場ではあるが、電力会社はいずれも再稼働にあたっては地元の自治体の合意を得ると表明している。東海第二や島根のように近傍に大都市があり、避難計画作成のハードルが高い場合、数多くの自治体と安全協定を締結している場合などは合意を得るために相当時間がかかる。

(2)政権の方針
現在の自民党政権は一貫して原発推進の政策を採っているが、政権交代した場合など、原発推進でなくなる可能性があり、ドイツのように期限を切って廃炉を迫られる恐れがある。

(3)新たな規制基準の追加や住民訴訟に対する新たな裁判の判決
新たな知見によって規制基準の変更が行われ、原子力規制委員会からそれに合致するような追加工事を求められる可能性がある。原子力規制委員会が運転しながらの追加工事を認めないため再稼働した後も停止に追い込まれるリスクもある。また、住民からの訴訟によって裁判所が再稼働を認めない場合や再稼働しても停止させられる場合がある。

(4)国内外の大事故、大きな自然災害、テロが起きた場合の影響
福島第一原発の事故が他国にまで影響したことを考えれば、国内外で原発の大事故や大きな自然災害(地震、津波、火山噴火など)、テロが起きた場合、原発に対する世論が厳しくなり、自治体の議会が再稼働に反対することが考えられる。また、関西電力のような不祥事によって電力会社への不信感が増した場合も再稼働が遅延することがある。

(5)再生可能エネルギーの開発状況など
再生可能エネルギーあるいは節電・省エネが大きく拡大した場合、特にポテンシャルの大きい洋上風力発電の計画が順調に進んだ場合、あえて困難な原発再稼働を進める必要がないのではないかという意見がステークホールダーから出る可能性がある。

現在、電力会社は廃炉決定した以外の原発についていずれも再稼働を目指すとしているが、上記のような要因でさらに再稼働の時期が遅れることが明らかになった場合、あるいは追加の工事費用が巨額になって残りの運転期間では採算が合わないと判明した場合は、財務状況次第では当該原発を廃炉にする方針を出す可能性がある。

以上のような再稼働が出来ないリスクがある一方、エネルギー安全保障の観点や温暖化対策の必要度が増すことなどで、原発再稼働に追い風が吹くことが考えられる。
・地政学的リスクにより天然ガスなどの供給が途絶することになった場合。
・地元の財政事情などから自治体の首長や議会が再稼働促進に向かった場合。
・原子力規制委員会が追加工事について運転しながら行うことを認めた場合。
・日本が温暖化防止策の上積みを国際社会から求められた場合、石炭火力発電所を止める際に原発を再稼働させるべきとの意見が強くなる場合。
・原発にも再生可能エネルギーのような電力の買取価格保証が付いた場合。

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