日本エネルギー会議

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誰もが気づいていること

誰もが気づいているが、口にしないことがある。それは現役世代の学力低下だ。自分のことは棚に上げてはっきり言わせてもらえば、団塊の世代以降、社会人となる学生の実力はこれまで毎年着実に低下している。どこに証拠があるのかと怒られそうだが、統計資料を示さずともさまざまな証拠はある。

若い頃、読んだ本に「路地裏の経済学」というのがあった。著者は2016年に85歳で亡くなった経済学者の竹内宏氏だ。タイトルの示すとおり、経済の実態は路地裏の様子を見ればよくわかるというわけで、各国各地域の路地裏を見て経済状態やこれからの予測がわかりやすく書かれていた。同じように、若手社員の能力は仕事の飲み込みや結果を見ればすぐにわかる。

団塊の世代の最後の年次が入社してくる頃になると、技術系の管理職からは人事の採用担当に「実力からすれば、今の大卒は昔の高卒、今の大学院卒が昔の大卒だ。そのつもりで採用してくれ」と注文がついた。管理職たちは、大学進学率がまだ2割程度だった頃に一流大学のそれも卒業成績がトップで入社したのだから、新入社員が頼りなく見えたのも仕方がない。それでも工業高校卒や高専卒は経済的事情で大学に行かなかっただけで、大学卒にひけを取らない人材だったため、発電でも保修でも現場は高卒がしっかりと支えていた。その後、大学の数も増え、大学進学率が上がると大卒は玉石混交状態になり、大卒はかつての高卒の職域に次第に広がっていった。

2000年頃には大学の先生が「新入生を教えることに困難がある。まず教科を教える前に高校の数学の復習をしなくてはならない」と愚痴をこぼすようになった。
「今の研究室は東南アジアの留学生でもっている」とも聞かされた。

最近、「今の大学生はサイン・コサインがわからないまま世の中に出る」とメディアが伝えたので驚いていたら、文系卒では分数がよく理解出来ない者もいるらしい。大学の数が増えたこと、進学率が上がったことによるものだろうが、ゆとり教育の弊害も大きいのだろう。大学でもトップクラスにはさすがにそんな学生はいないと思うが、大学間、学内での格差がとてつもなく拡大しているようだ。たぶん企業や役所では管理職が手をとるように指導し、チェックし、自らも担当者の仕事をしてなんとかミスを外に出さないように必死に頑張っていると思われる。

現役をリタイアしてから気づいたのは、市役所などから来る書類がいいかげんになったことだ。文章をわかりやすく正確に書くことが出来ていない。電話を入れて確かめることがしばしばあるが、外部に発信する前に上司のチェックは行われているようなので、そのクラスまでレベルの低下が及んでしまっているものと思われる。こうした能力不足を補うにはマニュアル化、ITの活用、外注化などをしているはずだが、それゆえちょっとした応用問題が起きるとたちまち対処が出来なくなっている。

さらに憂慮すべき事態が発生している。それは子供の人数が急激に減って高校や大学の入試倍率が下がり、定員割れの学校が無理やり学生を集めようとしていることだ。福島県立の高校でも今年全県の平均倍率が1.0台である。高くても3倍、マイナスになっているところもある。入試問題をやさしくするか合格点をどんどん低くするしかない。これでは授業のレベルを落とさざるを得ない。多くの大学や高校が淘汰され、進学率が昔の水準まで下がるにはまだ時間がかかるだろう。

若い世代の学力低下は日本の産官学の現場を直撃し、日本の国際的地位を下げる方向に作用することになる。水準以上の学力の貴重な卒業生を官庁や民間企業で奪い合っており、一部の大学や企業ではすでに若手の外国人採用によってこれを乗り切ることにしている。電力供給という社会的基盤を担っている電力会社や原子力を含めた電気事業に関連する製造業・建設業界では、こうした状況の下、危機感を持って対応が進められているのだろうか。

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