日本エネルギー会議

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SNSと避難計画

原子力規制委員会の審査に合格した原発が各地で再稼働を目指している。ネックとなっているのが地元住民の合意であるが、なかでも人口が多い地域での避難計画の策定がなかなか進まない。実際に何万人という住民が一斉に避難するとなると避難指示をどのように伝えるか、避難の手段はどうするか、道路の渋滞はどうするのか、避難先は確保出来るのか、入院患者などハンディのある人の対応はどうするかなど難しい課題が山積だ。

福島第一原発の事故後に一斉に避難することの混雑を避けるために、原発から5キロ以内の住民を直ちに避難させ、5キロより外側の住民は屋内で待機とされたが、果たしてそれでうまくいくか疑問がある。福島第一原発の事故の際に経験したことだが、事故が起きた3月11日夜から翌朝にかけて政府の避難指示より早く、自衛隊員、警察署員、消防署員、それに原発構内にいる東京電力の社員や下請の作業者から携帯電話やメールで本人の家族、友人、知人宛に「早急に避難するよう」盛んに情報が発せられたのだ。これによって翌朝、町役場から避難指示の放送のあった頃にはすでに多くの住民がマイカーで避難中であった。私は自宅で3月12日9時頃に町役場からの放送によって避難を始めたが、町民の中では避難が遅い部類で、昼前に川内村につづく県道の渋滞車列に追いついた。

福島第一原発の事故から9年経って、SNSはますます普及し、年寄りまでがLINEを使うようになっている。今、事故が起きれば当時以上にプライベートな避難勧告がいち早く広まることは間違いない。国が避難指示を出すことを決断し、自治体を通じて放送などで5キロ以内の住民に避難を呼びかけ、それ以外の住民に屋内待機を告げても、情報力で負けてしまう。

プライベートな避難勧告は国の避難指示よりずっと早く出る。いくら5キロ以遠の住民に自宅にいるように要請したとしても、その時刻には大半の住民の避難は始まって道路は大混雑している。そうなると肝心の5キロ圏内の住民の避難も難しくなるだろう。新しい避難方式を決めた人たちはこのことをちっともわかっていないようだ。

福島第一原発の事故当時、住民は原発事故の経験はまったくなかったため、原発事故や避難の意味が理解できず、それほど恐怖感はなかった。だが、9年前とはいえ、全国民が原発の過酷事故がどのようなものであるかを知っている。
実際に事故が起きたとなると、福島第一原発の事故のイメージが頭の中に蘇り、リアルな恐怖心が起きるに違いない。そうなると先を争って避難しようとするだろうということは容易に想像出来る。

コミュニケーション手段の発達と事故例があるということは、住民避難をスムースにするどころか、避難計画の策定のハードルを上げてしまつた。

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