日本エネルギー会議

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原発事故の影響(5)

福島第一原発の事故から9年経ったが、地域に与えた影響の大きさもさりながら事故は日本のエネルギー政策、そして原子力推進と反対の争いに決定的な影響を与えてしまった。

事故以前、反対派は脱原発の具体的な代替案も示さず、繰り返し原発の危険性を煽り、国と電力会社のやり方が力任せだと非難していた。その中身はどうみても科学的根拠が乏しく都合のよいデータと勝手な理屈で作り上げられた内容のものもあったと記憶している。いま、「反日種族主義」という本が日韓で売れているが、嘘とでっち上げで韓国国民を教育することがずっと行われてきた。そうやって反日が形成されたという内容だ。原発反対派のやったこともそれに近い。国民に対し、繰り返し原発を推進する電力会社は怪しげなものだとすり込んだ。国内外の事故トラブルが起きる度に執拗な攻撃を繰り返し、原子力のイメージを落とそうとした。しかし、国や電力会社は世論調査ではそれなりの原発支持率もあったため、国民が反対派の主張をそのまま信じてしまうことはないと思っていた。

ところが、福島第一原発の事故で反対派が蒔いた種が一気に開花した。国や電力会社の言うことはほとんど信用されなくなり、反対派はここぞとばかりに「原子力は人類の手に負える技術ではない」と畳み掛けてきた。破壊された原子炉建屋の航空写真や避難者の様子は、福島第一原発に限らずどこの原発も安全ではないという証拠として繰り返し使われるようになった。国や電力会社が原発は安全と言い切ってそれを強調しすぎたツケが回ってきた感がある。

また、福島第一原発の事故は、異常なまでの潔癖性、大きな力を持つものを悪とする見方、ひとつの結果からすべてを否定する傾向、原発にだけ絶対安全を求めるなど日本社会ならではの過剰な反応を引き起こした。(だからこそ、自然災害がきっかけとはいえ東京電力はあのような過酷事故は起こしてはならなかった。)福島第一原発の事故によって放射性廃棄物の処理処分問題も今まで以上に原子力の問題点としてクローズアップされるようになった。

時の民主党政権だけでなくその後を継いだ自民党政権も国民の顔色をうかがい、全原発の停止で国民を大規模停電と化石燃料代金の負担というリスクに晒し続けることになった。エネルギー安全保障と環境、そして国際競争力を考えれば、火力、原発、需要抑制の三本柱で頑張りながら再生可能エネルギー拡大を急ぐしかないのだが、原発再稼働はいまだに9基にとどまっている。まさに「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」だ。

福島第一原発の事故は原発事故そのものの解明がなされるとともに、こうした社会的、経済的な影響についても、その過程が詳しく分析され、そこから学ぶべき点を明らかにして次世代に引き継ぐことが求められる。日本では、福島第一原発の事故を経験した人が毎年100万人亡くなり、事故以降に生まれた人が毎年50万人増えている。要は教訓を伝える側が大幅に減り、伝えられる側が増え続けているのだ。福島第一原発の事故がどのようなもので、その影響はいかにして広がったかを調べることを急がねばならない。

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