日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

既に存在する巨大な蓄電装置

国が今後の主力電源とした再生可能エネルギーのうち太陽光発電は出力が不安定という欠点がある。夜間や雨天では出力がなくなり火力発電や揚水式水力発電などのバックアップ電源が必要となる。大型蓄電池でこれをカバーするという方法もあるがコストがまったく合わない。何か適当な蓄電装置はないものかと考えたとき、日本には既に巨大な蓄電装置があることに気づいた。それがエコキュートだ。

エコキュートはヒートポンプ技術を利用し空気の熱で湯を沸かすことができる電気給湯機の商品名で、正式名称は「自然冷媒ヒートポンプ給湯機」という。ちなみに「エコキュート」の名称は、日本の電力会社・給湯機メーカーが使用している愛称で関西電力の登録商標である。

デンソーなどの基本特許を基に、2001年にコロナが世界で初めて家庭用を発売した。翌年には複数の企業に同時に省エネ大賞の経済産業大臣賞が授与された。業務用エコキュートは東京電力が開発した。家庭用の価格は30万円程度で耐用年数15年としている。市場全体での累計出荷台数は2018年には600万台に達している。近所を見渡しても、ここ10年以内に新築した家でエコキュートが設置されていない家は見当たらない。燃焼型給湯機器と比較してエコキュートそのものは高価だが、深夜電力を使用すれば燃焼型給湯器に比べ運転費用が抑えられる。導入した人の96%が満足していると回答しており、これが爆発的普及の理由だ。長期エネルギー需給見通し(2015年7月)では、2030年までにエコキュートを1400万台まで普及させる目標となっている。

何故エコキュートが太陽光発電用の巨大な蓄電装置になるかと言えば、エコキュートは深夜電力でお湯を沸かしているが、これを真昼にシフトすることにより、その時間帯に盛んに発電する太陽光発電の電力を消費することが出来るからだ。深夜の消費電力はその分減るので、火力発電を絞ることで燃料代(石炭火力の場合、発電コストの45%、LNG火力の場合79%を燃料代が占める)といまや切実な問題となっている二酸化炭素排出量も減らせる。福島第一原発の事故以前、電力会社は常に全出力で運転する原発からの電力を深夜電力として割安に販売していたが、今のように原発が停止している状況では深夜電力の大半は火力発電によって賄われている。また、貯湯中の放熱ロスが発生するので昼間に太陽光発電の余剰電力をエコキュートで利用すれば効率がさらに向上するという利点もある。

2017年、国立の研究機関である科学技術振興機構がエコキュートのデマンドレスポンス効果(エコキュートによる湯沸しを昼間使うことによってどのくらい電力需要が抑制出来るか)を評価した。その結果、晴れた日の昼間に湯沸かし運転を行うことによって、従来の夜間運転に比べて、平均で年間5800円のコストメリットと8%の省エネ効果をもたらすことがわかった。

また、四国電力と同社グループの四国総合研究所は、デマンドコントロール技術で家庭にあるエコキュートを蓄電池がわりに使って昼間の太陽光発電の出力を吸収しようとする試みを進めている。家庭に設置されたエコキュートの湯沸かし運転に太陽光発電電力を用いる遠隔制御実証試験を2019年秋から開始。目的はエコキュートを遠隔から制御して電力需要をコントロールすることで、太陽光発電などの導入拡大において課題となる電力網の安定化や、太陽光発電の有効活用に役立てることだ。実証試験では40軒のモニター宅を対象に気象予報に基づき翌日の四国域内の太陽光発電量を予測し、四国総研が開発したデマンドレスポンス技術を用い、通常、夜間に行っているエコキュートの運転を翌日の昼間にシフトする。

卒FITで高い価格で売れなくなった住宅の太陽光発電は、エコキュートで自家消費したほうが売電するよりメリットがあることが分かれば、太陽光発電装置を付けた個人も、深夜電力のために火力発電の焚きましをしている電力会社もエコキュートの活用を選択するだろう。

卒FITを機に100万円もする家庭用蓄電池が販売されようとしているが既に日本の多くの家庭には蓄電池に匹敵するエコキュートという格好の蓄熱(蓄熱)装置が存在する。これをIT、インターネットを使って遠隔操作することで消費者も電力会社も新たな設備投資をすることなしに大きな利益を生み出すことが出来る。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter