日本エネルギー会議

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石炭火力ゼロへの挑戦(9)

前回まで、10年後に日本から石炭火力をなくすために再生可能エネルギーなど代替電源を増やせるかを検討してきたが、最後の総括を行う前に、今回取り上げなかった開発中の電源についてその開発の実情と2030年頃までの実現性を見ておこう。

現在までに取り組まれてきた新たな電源は多種多様。永らく巨費を投じて国際協力の下に続けられてきた代表は核融合による発電だ。現在、プラズマを燃焼させてエネルギーを発生させる国際熱核融合実験炉(ITER)をフランスで建設中だが、ITERに参加している国々でも、核融合発電所の設計活動を加速させており、ITERの成果と各国の既存の実験装置を用いた基礎研究の成果をあわせて、発電炉を設計・建設して30年以内の発電実証を目指している。アメリカなどではもっと小型の核融合装置をものにしようとするメーカーやベンチャーも存在する。核融合炉は規模、安定性、燃料の無尽蔵、二酸化炭素フリーなど優れた特徴を持つ理想の熱源だ。ただ、核融合炉が出来てもその桁はずれの熱を使って電気を起こすにはまた高いハードルがあるようだ。

次によく期待が語られるのが海洋エネルギーだ。島国の日本は地域や海域特性により「波力、海流、潮流、海洋温度差」などの海洋エネルギーの大きなポテンシャルを有しており、高い造船技術も持っていることから期待が大きい。仕組みは比較的簡単なものだが、自然が相手であり、太陽光や風以上にうまく商業ベースにするにはまだ実証が始まったばかりで規模が実用的なものになっておらず、どのような装置が効率的なのか、メンテナンスが楽なのか手探りが続いている。

熱で電気を起こす電素子発電や超臨界水を地下に巡らせる新しい地熱発電、あるいは宇宙空間に打ち上げたソーラーパネルで発電して地上にマイクロ波で送電するなどさまざまなアイデアが試されている。だが、原理はわかってもそれを実験装置から実用規模に引き上げるにはまだまだ道のりは遠い。

2030年まであと10年しかないが、巨大な装置となるものは原発などコンベンショナルな電源であっても計画づくり、装置づくり、立地の確保だけで10年くらいはすぐにかかってしまうので候補にはならない。ましてまだ実証テスト段階というのではとても間に合わない。そうなるとここ10年で貢献しそうな技術は、既存の電源の飛躍的な能力向上、コストダウン、安全性の向上などに資するものとなる。例えば、太陽光発電用のパネルの発電効率や製造コストがAIやIoTで画期的に改善されるといったことである。また、既存の電源を最も有効に使うためのインターネットやブロックチェーンを使ったVPP(仮想発電所)による最適電力需給システムである。こうした技術は画期的なものが生まれる可能性がある。しかし、今はそれがどのようなものかはまったく予測がつかない。

いままで8回にわたって既存の電源容量を2~3倍に増やすことにより石炭火力の発電量シェアを2030年にゼロに出来るかを電源別に検討してきたが、下記のとおりいずれの電源でも達成の可能性が高いことがわかった。

(1)太陽光発電(現在の発電容量の2倍)
今後、メガソーラーは伸びなくなるが住宅用は着実に伸びる見込み。また、大消費地に向けての連係線の整備や運用改善により接続抑制問題も解消していくと思われる。

(2)風力発電(現在の発電容量の3倍)
海面利用の法的な整備が出来たこと、欧米で大型高性能機が実現していることから、日本でも電力会社だけでなく、商社や外資も参画して北日本などで続々と計画が進むものと考えられる。

(3)地熱発電(現在の発電容量の2倍)
地域や環境、特に温泉、国立公園などが障害になっているが、これらの問題がないバイナリー方式が各温泉地などで普及する可能性が高い。

(4)バイオマス発電(現在の発電容量の2倍)
燃料となる木質チップの確保が課題であるが、地域の山林の活用、石炭火力発電からの転換が期待出来る。

(5)原子力発電(現在の再稼働した原発の発電容量の2倍)
新設は困難であるが、審査に合格した既設原発を地元の合意を得て少なくと半数再稼働させることは10年あれば出来るものと思われる。

(6)節電・省電(需要全体の13%強の削減)
国民負担、環境からして一番に取り組むべきであり、今後の技術開発や普及面でも大きく進むポテンシャルを持っている。EV普及による電力需要増加分もこの節電・省電でカバー出来る。

⑴⑵⑸は容量も大きく可能性も高い。⑶⑷は現在の設備容量が極めて小さく、これを2~3倍にするのはそれほど困難ではない。ただし、日本が2030年までに石炭火力ゼロにするため⑴~⑹が達成出来るとしても、石炭火力関連の企業への経済的補填、雇用問題など移行措置を適切に行うことが出来るかという問題は残される。

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