日本エネルギー会議

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トリチウムを含む水の処理

人は類似のセーターが入手可能であっても子供の頃に母親が編んでくれたセーターには特別な思い入れを持つ。福島に住んで原発事故を経験した人は、トリチウムを含む水に対して他県の人にはない特別の感情を持っている。
福島の人々も以前、福島第一原発が運転中にトリチウム含んだ水を放流していたことは容認していた。どれほど認識していたかは別にして、少なくとも事故前に前面の海域に放流していることへの地元の反対運動は聞いたことがない。
しかし、今回、問題になっているタンクに入っている120万トンの水は事故のために燃料溶融したデブリに壊れた建物の隙間から山側からの地下水が接触した事故由来のものである。この水の放流は原発事故処理の一環であり、普段の運転中のものとは別に処理すべきものであると考えるのだ。それなのにタンクの設置場所がない、濃度が同じだからと言って希釈して流してもよいということに住民としては直ちに認めたくはない気持ちがある。

原発事故によって発生した廃棄物に対する地元住民の視線は厳しいものがある。中間貯蔵施設に集められた除染に伴う土壌や使用済み燃料も、県外搬出を強く求めて施設の建設を認める条件にしている。その結果、国は搬出先のあてのないまま30年後までに県外搬出の約束をせざるを得なかった。事故を起こされてさんざん迷惑をしたのだから、住民としては事故の後始末まで負担が集中することは納得がいかないのだ。

そもそも、東京電力がトリチウムを含む水を200万トンもタンクに貯めてしまったのは、事故由来の水だからという意識があったからではないのか。そうでなければ、ALPSなどの処理設備が完成し、トリチウム以外の核種を除去出来るようになった時点で海に放流してもよかったのである。それは地元が許さないだろうということは住民に尋ねるまでもなく、東京電力はわかっていたから現状があるのだ。この問題は東京電力が希釈して海に放流したいと言い出すのを9年間先延ばしにしただけだ。意地悪な見方をすれば、「もうタンクを増設する場所がない」という条件をつくることで、地元が放流を認め易くする交渉術を使ったようにも思える。

東京電力はある時期から発生する水量を減らすため、山側から流れてくる地下水を原発の手前に井戸を掘ってそこから汲み上げて原子炉建屋を迂回するルートで海に放流している。もちろん水道水の基準よりはるかに厳しい値でチェックして放流しているが、それをやる際に東京電力は漁業組合と建屋内の処理水は漁業者の理解を得るまで海洋放出しないことを確約している。約束をしてひとつの案件を通し、次の段階ではやはりできないとしてその約束を反故にして地元に苦渋の決断を迫る。従来、国や電力会社はこのやり方をしばしばやってきた。相次ぐ工事期間延長もその一つだ。漁業組合は国や東京電力がこうしたやり方を繰り返そうとしていることに反発している面もあるのではないか。

汚染水流出等トラブルが伝えられる度に、試験操業は延期をやむなくされた。また、先述した福島第一原発構内で発生した地下水のうち、「井戸水」と「サブドレン水(注)」については、現在も海洋に放出されている。この放出を行う前に、政府と東電は県漁連と交渉を行ってきたが、汚染水流出によってシラスの試験操業の延期をやむなくされるなどの経緯もあり、交渉は難渋し、漁連の苦渋の判断のうちに2015年9月から放出が行われている。
(注)サブドレンとは、原子炉建屋周りの井戸。この井戸から水を汲み上げて建屋への地下水の流入を防ぐ

この交渉の時に、漁連はいくつかの申し入れを東電に行っている。そのなかのひとつに「多核種除去装置(ALPS)で処理した汚染水は漁業者の理解を得られない限り海に放出しない」との条件があり、このことがタンクに水が溜められてきた大きな理由のひとつとなっている。発生量を減らすためサブドレンの放流はやむなく認めた これが限度 この交渉の時に、漁連はいくつかの申し入れを東電に行っている。そのなかのひとつに「多核種除去装置(ALPS)で処理した汚染水は漁業者の理解を得られない限り海に放出しない」との条件があり、このことがタンクに水が溜められてきた大きな理由のひとつとなっている。

福島第1原発の汚染処理水処分、風評対策が焦点 政府が地元で意見聴取
3/30(月) 14:52 毎日新聞
東京電力福島第1原発にたまり続ける汚染処理水の処分方法を決めるため、政府は4月6日、福島市内で業界団体など関係者から意見を聞く会合を開く。その後も、福島県内外で複数回開催。有識者による政府の小委員会がまとめた「海洋放出」「大気放出」の2案に加え、風評対策を具体的にどう説明するのかが焦点になる。
◇22年夏ごろにはタンクが満水に
タンクの汚染処理水は現在、約120万トン。その量は東京ドームの容積に匹敵する。タンクは2020年末に計137万トン分まで増設される計画だが、それでも22年夏ごろに満水になる見通し。そのため、有識者小委は今年2月に「現実的な選択肢」として海または大気への放出案を示しつつ、海洋放出の優位性を強調する報告書をまとめた。
ただ、国の担当者が3月12日、福島県の浪江町議会に報告書の内容などを説明すると、議会側は「反対意見はずっと同じなのに説明の内容が一向に具体化しない」と反発。佐々木恵寿議長は「(タンクの容量を理由に)時間切れを狙っているのでは、と疑心暗鬼にもなっている」と地元の心情を代弁した。17日には海洋放出の反対を全会一致で決議した。
汚染処理水のうち、約7割はトリチウム以外の放射性物質も含まれるなど、放射能レベルが高い。このため、多核種除去設備「アルプス」などに通してから処分するという。その場合、トリチウム以外は可能な限り取り除き、トリチウムは国の基準(水は1リットル中6万ベクレル、空気は1リットル中5ベクレル)を大幅に下回る濃度に薄める。海または大気へ放出する前には、第三者による分析を求める方針だ。東電は海洋放出の場合、放出量などによって福島第1原発から最大で沖合約2キロ、南に約20キロ、北に約10キロの範囲に広がると予測する。
しかし、汚染処理水の風評は国内外に及んでおり、第三者の分析機関の選考には透明性の確保が求められる。放出にあたり国際原子力機関(IAEA)の事務局長は、日本政府への支援を表明しているが、風評対策について誰がどのように実施するのか、政府の踏み込んだ説明が必要だ。
経済産業省幹部は「疑心暗鬼のままでは話は進まない。放出時の放射性物質の濃度や時期、風評対策で何が必要か、しっかり関係者の話を聞き、処分方針を決めたい」と話した。【荒木涼子、斎藤有香、高橋隆輔】

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