日本エネルギー会議

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ひきこもった原子力

長年、原子力業界にいたが、原子力業界は他の業界から特別なところだと見られていたと思う。他の業界どころか電力会社の中でも特別であったようだ。他電力との研修会で一緒になった火力発電部門の方と親しくなるとその方は「うちの原子力部門ですが、あそこは別の会社ですから」と自嘲気味に言われた。多分、予算や人材配置が特別に優先されていると言う意味だろうと推測した。あるいは原発の稼働が優先で火力はいつもそのカバーをさせられているという不満だったのかもしれない。

そもそも半世紀前に、原子力の会社に就職すると学校の友人に言ったら、友人の多くはなんで原子力に行くのか、お前はやはり変わっているなという顔をした。会社の役員でさえ、「同窓会に行くと、お前の勤め先の実態を聞くとそれは株式会社ではないなとからかわれる」と言っていた。実際、何年赤字を出しても銀行が金を貸してくれる会社は世の中にそうないと思ったものだ。

原子力PAは原子力を一般化しようとする大掛かりな試みであったが、なかなか進まなかった。各社のPRホールは最新の映像技術を競い合い、原発のことをやさしく書いた豪華なパンフレットが何万冊も作られた。海外の競争相手と戦っている製鉄所に見学に行った際にそのパンフレットを差し上げると目を丸くされたものだ。一般の人たちを原発の内部をご案内するというキャンペーンが業界を挙げて行われたが、目標の人数に達する前に核防護の観点から中止になった。メディアも原子力を特別扱いにした記事を書き続けた。自動車メーカーの社長が経団連会長であったころ、その会長が時々、原発に依存しない方がよいというニュアンスの発言をされ、上司から「経団連に行って会長があんな発言をするなら会費を払いたくないと言ってこい」と命じられたこともあった。

そうこうする間に、原子力界も一般の方に面倒な説明をせずに「お任せ下さい。十分に安全ですから」と言った方が楽だということになったように思う。執拗に言いがかりをつけてくる反対派は相手にしないことにし、原発からの恩恵を求めてくる人たちの手助けをもらい一般の方を推進に引き入れる多数派工作が主になった。一連のデータ改ざん等の不祥事が起きるようになると、原子力を一般化するのではなく原子力の特殊性をそのままにしておく傾向が見られるようになった。

長期にわたる停止などで稼働率が低下し、原発が経営の足をひっぱるようになると社内での立場も苦しくなり、原子力部門はますます内に引きこもるようになり、不祥事の教訓であった情報公開にもブレーキがかかった。電力会社の内部でも大津波の警告に対して扱いを苦慮していたことなど、原子力部門以外では知るよしもなかった。こうしたひきこもり状況が原発の安全にとってマイナスの要因となったと考えられる。

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