日本エネルギー会議

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横並びの功罪

日本人には横並びの習性がある。成人式の振袖などが良い例だが、似合う似合わないは関係なく、成人式に出席する女性は振袖が圧倒的に多い。横並びは没個性であるが、それを徹底すると制服になる。いろいろ考える必要もないので、気分的には一番楽だ。

原発の安全対策にも横並びの問題がある。従来、日本の電力業界は地域独占で数も限られていたため経済産業省の指導のもとに護送船団方式に近いことをやってきた。電力会社は国の定めた規制基準に従うだけでなく、自主的に安全性を高めて行くということになっていて、そのために電力会社などが協力し原子力安全推進協会を設立しその活動を支援している。先頭を切って進んでいる対策は良好事例として他社にも紹介され、これを取り入れることを勧めているが強制力はない。

安全対策を追加するには資金が必要で、実施するためには原発の運転を停止しなくてはならない場合も多く、先頭を切って実施することはもとより、後追いのケースでもなかなか抵抗がある。しかし、どこかで進んだ安全対策が行われたとすると、他の原発の地元からはどうして自分たちのところはやらないのかという不満が出てくる。各原発は安全規制基準をクリアーしており、新たな対策はあくまでプラスアルファであると地元に説明してもなかなか納得されない。福島第一原発事故の後、東京電力の南直哉元社長が「事故を起こした福島第一原発は国の安全審査に合格していた設備」であることを記者会見であえて主張したが、これは世論の反発を受けるだけだった。

一般的に電力会社は安全成績、安全対策の比較をされることを好まない傾向がある。安全対策の比較は原子力規制委員会がやらないのであれば原子力安全推進協会がやるべきだろう。そうすれば業界における協会の権威も上がり、安全推進が軌道に乗るはずだが、電力会社に遠慮して社会への情報開示はもとより業界内部へもあまり行われていないようだ。このあたりがアメリカと日本の風土の違いだと感じる。

横並びは安全対策が遅れている原発をより安全なものへと変える力となる一方、事前調整のため、せっかく先頭を切って安全対策の上乗せをしようする電力会社の実施時期を遅らせる原因にもなる。貞観津波の再来に対応するため、東北電力や日本原電が対策を講じようとしていたが、対策の先送りを画策していた東京電力はさかんに2社に対して牽制をしていたということが係争中の裁判で明らかにされている。なんらかの都合で追加の安全対策をやらなかったり遅らせようとした場合には、横並びは悪い方に働くのである。

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