日本エネルギー会議

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コロナウィルスの影響

今回の新型コロナウィルスの感染拡大は原子力界にどのような影響を与えているのか。既に現場からはいくつかの影響が報告されている。
現在、九州電力玄海原発で進められているテロ対策施設「特定重大事故等対処施設」の工事関係者が発熱症状で感染が確認され指定医療機関に入院、同原発では二人目の感染者となった。本人は発症前、北九州市と大阪市に行ったことがわかっている。工事関係者約300人を出勤停止し接触者など調査することとし工事は中断されている。玄海町は九電関係者の不要不急の来庁を控えるよう要請した。

東京電力本社で社員4人の感染が明らかになり200名が出勤停止となっている。福島第一原発では溶け落ちた燃料の冷却や汚染水処理は維持するものの廃炉作業の体制を縮小する。また、社員の本社と現場の行き来を制限した。原発関係の工事は技術的に幅広く、しかも多層構造の請負体制で行われているため他の地域からの技術者や作業員が原発を訪れる。感染拡大を防ごうとすれば工事は遅れるだろう。他にも東京電力が福島の復興のために地元で行っている草刈や片付けなどのボランティア活動も関東地方の各支店からの応援が出来なくなり、縮小せざるを得なくなっている。

茨城県の大洗町にある東北大金属材料研究所の原子力施設の排気筒が4月13日の強風により倒壊したが、県と町は、原子力安全協定に基づく施設側からの報告が遅れていたと発表。遅れた原因として新型コロナウィルスの感染防止対策でテレワークをしていたため通常の三分の一しか出勤者がいなかったことがわかった。他の原子力施設でも、事故やトラブル時に人手不足の影響が生ずることも考えておかなくてはならない。

米国ではA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機を建設中だが、9000人いる作業員に多数のコロナウィルス感染陽性が出たため、ジョージア・パワー社と親会社のサザン社は今月に入って、新型コロナウィルスによる感染の影響を軽減するため、現場の労働力を約2割削減する。プロジェクトの遅れやそれによる建設費の増加が心配される。

規制関係では、原子力規制委員会の定例会合を当面これまでの毎週から隔週の開催に変更。原子力規制庁職員は原則在宅勤務とし、業務内容に応じた必要最小限の人数のみの登庁している。新規制基準適合性に係る審査の進捗については、新型コロナウィルス感染症の拡大防止対策を踏まえ、ウェブ会議・テレビ会議を基本とし書面審議も併用しながら必要最小限の関係者を来場させ、審査に遅れが生じないように努めるとしている。緊急時対応体制は確実に維持しなければならないため、課室ごとに職員を2チームに分けて接触をできるだけ避けることにしている。また、国際協力で来日中の米国検査官は急きょ帰国。海外研究機関との情報交換の予定はすべてキャンセルとなった。核セキュリティの確保に向けた対応の重要性は変わらないことからIAEAによる保障措置の査察活動には規制庁職員も同行する。

このようにコロナウィルス感染拡大は稼動中の原発や研究施設に対応を迫っており、感染者が出た現場には少なからずマイナスの影響が出る。従来、地震や津波といった自然災害やテロへの備えに注目が集まっていたが、新たな脅威としてのウィルスへも対策が求められている。

国の緊急事態の下、原発の運転はテレワークでカバー出来ない現場作業が多く、その省力化をどうするか、最低限必要な人数をどのように確保出来るか、現場での感染防止をどうするかなど課題は多い。ウィルス蔓延時に自然災害や事故が起きれば対応は一層困難となる。今一度、原子力規制や原子力事業遂行における災害対策を見直す必要がある。

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