日本エネルギー会議

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巧みな小出し戦略

BSフジのプレミアムニュースで、危機管理が専門の大学教授が日本流コロナ対策は意図的な小出し戦略だという見方を話していた。外出や営業の自粛はいきなり長期間だと国民が気持ち的に受け入れられない。とりあえず二週間と言っておけば、「そのくらいなら我慢するか」と受け入れてくれる。二週間経って感染の勢いが止まらなかったら、その時点でさらに延長を申し出れば「しかたがない」とまた受け入れてくれる。営業自粛要請の対象も出来るだけ少なくしておいたほうがよいという方針だ。

これに対して、小池東京都知事は「最初は大きく、様子を見て徐々に緩めるのが危機管理の基本」と主張して政府のやり方と真逆だ。
小出し戦略は福島第一原発の事故の際も民主党政権に採用された。核燃料はメルトダウンし敷地の外に放射能が出ていたが、枝野官房長官はさかんに「健康には問題ない」と言い続け、避難指示区域も発電所からの同心円で時間がたつにつれて少しづつ拡大させた。その後原発の北西の方向に多くの放射能が飛散したため、飯館村などを同心円の外に特別に付け加えた。住民に不安感を与えないようにと配慮したのだろうが、避難している人々はどちらの方向にどこまで逃げればよいか迷った。

事故の拡大が一応収まり廃炉計画を作った時点で政府は廃炉には2兆円かかるとしたが、実際に廃炉工事がスタートすると、今度は廃炉費用が8兆円くらいかかると言い始めた。ところが直後にシンクタンクが51兆円と発表するなど、見直すたびに増えている。最初に8兆円と言えば大騒ぎになると考えたに違いない。そこで小出しにすることにしたのだと思う。  

大きく被せて緩和するという危機管理の鉄則の逆張りは日本人にはあっているのかもしれない。実はもっと大きいのではと思ってもおかしいと言わないのはどうせそんなものでは収まらないと醒めた感覚でいるためなのか。政府もその特質がわかっているから、いつも小出し戦略を取るのだろうか。

そもそも原発や再処理工場の建設費も小出し戦略だ。エネルギー基本計画(第5次 2018年7月)は、「エネルギー政策の基本的な方向性を示すためにエネルギー政策基本法に基づき政府が策定するものとしており、エネルギーを巡る国内外の情勢変化を踏まえ、2030年、更に2050年を見据えた新たなエネルギー政策の方向性を示すもの」としている。であれば原発の建設費や太陽光発電、風力発電の発電コストは目標達成時点を推定したもので議論すべきだ。かつて原発の建設費は5千億円程度だったが、今新設すれば1基1兆円と言われているし、太陽光(メガソーラー)は2019年第4回の入札では最低落札価格はキロワットアワー当たり10.50円だった。海外ではとっくに10円を切っている。

今後10~30年の計画を策定するのにいずれの電源も過去の実積発電単価をつかうというのはどういうことか。そのことに疑問を呈さない委員はいないのか。これでは国の原発推進政策に対する不信感が増すばかりだ。

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