日本エネルギー会議

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巨大プロジェクトの相次ぐ遅延

国内で巨大プロジェクトが相次いで完成遅延となっている。名護市辺野古の新基地建設で軟弱地盤が明らかになり、埋め立て工事の終了時期が予定より約1年遅れ費用が約2.7倍の約9300億円になる。これで新基地建設竣工は4年遅れが確定。普天間飛行場の返還はさらに遠のいた。

三菱重工は悲願とするスペースジェットの納期に関して当初2013年だったものを今年以降にすると発表した。これで延期は6度目となり航空会社からのキャンセルが続いている。第3四半期決算でスペースジェット関連の特別損失は約5000億円となった。三菱重工は2011年にも2隻の豪華客船の建造で納期延期を繰り返し2500億円の特別損失を出している。

電力業界では原子力関係のプロジェクトが以前から完成延期を繰り返している。着工から26年、当初7600億円だった総工費が3兆円にもなった青森県六ケ所村にある日本原燃の使用済み核燃料の再処理工場は完成時期を24回延期して、現在は原子力規制委員会の審査が最終段階だ。ここにきてコロナウイルス感染問題が起きて規制委員会は慎重な姿勢を崩していない。

原発に目を転じれば福島第一原発の事故以降、9年間で再稼動した原発はこれまでに9基。他はいずれもいまだ審査中、審査待ち、審査準備中だ。福島の事故当時、建設終盤だった中国電力の島根3号機は、安全対策工事の総費用を500億円増やし、5500億円の見通しに引き上げた。対策完了時期を見直すのはこれで7回目だ。

このほか、電源開発の大間原発、東京電力と東北電力の東通原発、中国電力の上関原発、九州電力の川内原発増設、日本原電の敦賀原発3、4号など建設中、建設準備中の合計出力1241万キロワットの原発がずっと足踏み状態を続けている。電力会社はもとより建設に携わっているメーカー、ゼネコンも体制をまったくなくすわけにはいかない。

かつては関西電力・中部電力・北陸電力の珠洲原発、中部電力の芦浜原発、あるいは福島第一原発の事故を契機に撤退した東北電力の浪江小高原発の例はあるものの、準備工事を開始したプロジェクトについてはいずれも建設計画を撤回せず体制を維持したままである。

こうした遅延プロジェクトについて気になる点がある。時間の経過はプロジェクトの費用を増加させ、出来上がったときには発電コストは高く、一時代前の設備となる。エネルギー基本計画で示されている10.1円/キロワットアワーは到底実現できない。また、その時までに新たな知見が出れば原子力規制委員会からそれへの対応を迫られ、費用増加とさらなる工期延長とならざるを得ない。どの程度の完成遅延でどのくらい経済性の悪化をもたらすかを検討し、(内部ではやっている)これをステークホールダーに公開するべきだ。

プロジェクトの完成延期は経営面ではあてにしていた売上が先送りとなり、費用が嵩むため収支に悪影響を及ぼす。このためさらなる資金の借入が必要になり株価にも影響する。温暖化対策としての二酸化炭素排出量の削減が出来ず、故障のリスクを伴いながら老朽化した火力発電所を引き続き運転することになる。自由化後に顧客を新電力や大手電力会社に奪われ、料金値上げをしたくない経営にとって泣き面に蜂と言ってもよい。

アメリカ型資本主義であれば、株主が騒ぎ出し電力会社も早々にプロジェクトからの撤退に踏み切るのだが、日本の場合、金融機関や保険会社などが大株主となっており、電力会社が破綻した場合は大きな損失が出るので株主総会ではプロジェクト継続を唱える電力会社を支える側にまわる。いままでにつぎ込んだ投資がもったいない、協力してくれた地元に申し訳が立たない、自分が退職金を手にするまではそんな恐ろしいことはやりたくないという思いもある。日本ではプロジェクトから撤退しなくてもよい仕組みとそれを許容する環境が存在する。

いよいよとなれば原発推進政策を続けている政府が会計ルールを変更するくらいのことはしてくれると大手電力会社は考えているのかもしれない。しかし、大手電力会社そのものの経営が行き詰まることになれば、その時点でパンドラの箱が開き、電力料金の高騰、税金の投下となるのだが、はたしてそれでよいのだろうか。

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