日本エネルギー会議

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ピーク対応のやり方

新型コロナウィルス感染拡大で日本でも医療崩壊の危機が迫っていると第一線の医師たちが警告している。これまで医療費を抑制するため医師の数を抑制し病床数を減らしてきた政府は研修医、歯科医、看護師のОBを動員するなど大慌てだ。設備は金さえ投じれば比較的短期間に追加措置は出来、消耗品などは購入すればよいが、医師や看護師などのスタッフは養成に時間がかかる。

今回のような緊急事態が発生すると通常の何倍もの人数が必要になる。かといって普段からそのような人数を抱えておく経済的、人的余裕もないのが我が国の現実だ。そんな時、原発の定期検査中の対応が参考になる。全国の原発では運転中と定期検査中に工事に携わる人数が数倍も違うためそれをどのように確保するかについて長年原発の現場でさまざまな工夫がされてきた。

・元請である原子炉メーカー(日立、東芝、三菱)が建設工事や定期検査工事に対応出来る下請および孫請け企業を指定業者として抱え込み、それを全国の原発の建設や定検に合わせて現地に行ってもらい、さらに現地の人を臨時に雇用する。定検時期が重なるとその調整に苦労するが年間の仕事量が平準化され最も効率的な方法である。
コロナウイルス対応ではピンチの病院に余裕のある病院から医師や看護師のチームを応援させる仕組みが考えられる。

・原発の運転中は最小限の人数にして残りの人数を別の業務に就かせておく。定検になると別の業務は中断して、定検後に再びその業務を再開する。別の業務とは例えば廃棄物の処理のような業務である。フランスでは本社の設計部門などに緊急時の専門知識を持った要員を配置しておき、これを交代制のチームメンバーに入れて、緊急時には緊急対策要員として招集をかけることをしている。
コロナウイルス対策のために常日頃から人を抱えておくのは金が掛かりすぎる。そのため、普段は別の仕事(例えば教育指導、研究業務など)をさせておき緊急時に招集するようにすることが考えられる。

・高度な溶接などの専門技術者は貴重であるため、現場での補助者をつけることで、専門技術者が専門業務に集中して時間をつかえるようにする。
コロナウイルス対応でも、防護具の着脱、物品の搬入搬出、計測、記録、連絡など医師、看護師でなくても出来る仕事をする補助者の数を増やすことが考えられる。現場での休憩場所の設置、宿舎までの送り迎えなどで少しでも疲労軽減が出来るようにすることも必要だ。子供のいる看護師に対して、家にベビーシッターやヘルパーや調理人を派遣してあげてもよい。

・毎年行われる作業には専用の治工具を開発し、現場で保管しておくことで、定期検査時に担当出来る人を増やし、また作業効率や品質をあげることをしている。コロナウイルス対応でもこれは可能である。

・原発では基礎知識、基礎学力さえあれば新たに集めた人たちをすぐに現場で使えるようにするための教育コース、教材、訓練施設を開設してある。これは電力会社社員用の施設であるが下請けの作業者も使わせており、技能認定制度もある。コロナウイルス対応でも、速成教育コースや施設などを国が作って緊急時にも使えるようにすることが考えられる。
 
なお、原発にもまだ課題がある。原発の過酷事故は定期検査などの停止中より運転中の方が起きる可能性が高いが、運転中は現地のメーカー、下請け以下の人数は1基当たりほぼ電力会社の社員と同数の200~300人で、事故発生時の対応に当たれる人数は限定的である。他の原発などからの支援を求めても到着するまで一定の時間が必要となるのが辛いところだ。特に年末年始や休祭日は追加の人手の確保は課題であり、この点にも万全を期しておくことが必要なことを付け加えておきたい。

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