日本エネルギー会議

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原発はなぜ潰れないのか

「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」というタイトルのベストセラーになった新書がある。誰もが不思議に思っていることの内幕を明らかにした本で、結論は「単価は高く、費用はなるべく低く」ということのようだ。同じように再稼動の見通しの不透明な原発や長期間止まっている原発の新増設計画がいつまでも存在していることを不思議だとは思う人もいるはずだ。

結論から言えば、電力会社が原発を支えているたくさんの仲間を持っているから潰れないのだ。その仲間とは国策として原発を推進してきた中央・地方の政治家と経済産業省などの官僚、ビジネスとして参画してきた地元商工業者、原子炉メーカー、ゼネコン、工事会社、金融機関などである。もちろん原発のメリットを理解し支持する一般の方々も含まれる。さらに大手電力会社と売電契約を結んで電気料金を支払ってきた多くの消費者である。

日本の原発の半分を占める沸騰水型軽水炉はこの10年間止まったまま。経済性からすると原発は現在、大変厳しい状況にあるが、仲間たちが支えることで生き延びている。一般の企業で10年間も何も生産しない工場を維持しながら存続出来る企業はないはず。潰れないのは本来なら出せない費用を誰かが出しているからだ。

東京電力は福島第一原発の事故後も首都圏の電力供給の大半を行っており、さらに福島第一原発の廃炉もやってもらわねばならないから、国が特別に資金を貸して倒産させないでいる。おかげで日本原電や日本原燃が生き残れ、地元からも文句が出ていない。

他の大手電力会社は自由化後に新電力に徐々にシェアを奪われているがまだ若干の余裕はある。そこで、止まっている原発をそのうち稼動するから会計上、大きな資産と見なして計上している。この会計処理を公認会計士も経済産業省も株主も認めている。大きな資産は大きな償却費や運営維持費の発生につながり、消費者はその分高くなっている電気を買っているわけだ。

各大手電力会社はすでに廃炉を決めた原発について残りの運転年数、出力、安全性向上のための追加工事費、代替電源の有無などなんらかの基準をもとに検討をしたはずである。残りの原発についてもこれだけの時間が経過したのであるから再検討がなされているはずだ。

今から50数年前、日本原電は我が国初の商業用原発である東海原発の試運転が不調でいつまでも営業運転に入れず苦しんでいた。私は入社試験の社長面接で「今、東海の現場では産みの苦しみを味わっている。この会社はこれからどうなるかわからない。君はそれでも入社するか」と尋ねられた。それから10年経過しても日本原電は累積赤字を解消出来なかった。原発しか持たない日本原電の財務諸表では大赤字を隠しようもなかった。それを出資者である大手電力会社などが破綻しないよう支え続けてくれた。だが、それは初めての原発であるというリスクを各社が共同で負担したのであって、今日のベーロード電源としての原発の状況とは違う。

何故、潰れそうな原発を支えているかと言えば、支えている仲間たちが原発に潰れてもらっては困るからだ。原発が運転可能な期間を残して潰れて(停止、廃炉)しまうと、大きな資産の償却不足が明らかになり、たちまち電力会社のバランスシートは危うくなる。そうなると株価は急落し、融資した金は不良債権化し、大株主であるとともに貸し手でもある金融機関や保険会社が大打撃を受ける。地元は大事な雇用や商取引を失う。政治家は選挙の支援者を失う。メーカーは仕事が減り設備が過剰になる。消費者は大手電力の危機的な経営状態によって電力供給の不安定というリスクを抱えることになる。それが恐ろしくて原発を資産から外せないでいるのだ。これは一種の粉飾であるが、経済誌などメディアも報道しないのは見て見ぬふりの仲間なのだろう。東芝の粉飾破綻や関西電力の会社ぐるみのガバナンス不全が思い出される。

このような状況はいつか破綻する。というのは一銭も稼がない原発を維持し続ければ、火力発電などのメンテナンスや設備更新が出来ずに発電や送配電が出来なくなり、再生可能エネルギーなど新規事業への投資に金が回らなくなり時代に合わせた新たな事業展開が不可能になるからだ。このままでは大手電力会社は動かない原発と心中することになる。どんなことがあろうと降伏は口に出せず国民を道連れに玉砕に向かった戦争末期の大本営と同じだ。

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