日本エネルギー会議

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東京電力のパラドックス

電力自由化が進み、電力需要は年々減少する中、電気事業には異業種の参入が相次いでいる。電力利用に関する技術は発電から送配電まで急速な進歩を遂げておりITと絡んで新たなビジネスも続々と登場している。大手電力会社も、今は大胆な経営戦略に生き残りを賭けようとしている。大手電力会社の強みは膨大な資産、権利、経験豊かで愛社精神の旺盛な社員、長年取引をしてきた取引先、地域の顧客、全国的な知名度と信用など。弱みとして保守的な社風、競争のない環境に育ってきた社員、過去の輝かしい業績、従来のビジネスの継続負担などがある。

再生可能エネルギーに本格的に取り組むにあたっては、まず組織を独立させる動きがある。主力であった火力発電、原発に関わってきた社員が多くいる環境下ではなかなか再生可能エネルギーに向かう機運にならない。再生可能エネルギー専門の会社や部門を立ち上げることは的確な戦略だ。

東京電力は昨年から再生可能エネルギー部門の分社化の準備をしてきたが、今年4月に完全子会社の「東京電力リニューアブルパワー」を設立した。電力小売事業を手掛ける「東京電力エナジーパートナー」、送配電事業を管轄する「東京電力パワーグリッド」、発電事業などを担う「東京電力フュエル&パワー」に続き、第4の柱となる事業会社の誕生である。再エネ事業に特化できる体制を構築し、国内外で600~700万キロワットの再生可能エネルギー電源の開発を行い、10年後には営業利益1000億円を目指している。

中部電力も再生可能エネルギー電源の新規開発を加速するため、今年4月に組織改編を行い、再生可能エネルギーカンパニー企画室の事業開発グループを「風力・太陽光開発グループ」と「バイオマス・地熱開発グループ」に分割した。10年後に200万キロワット以上の開発を目指しているが東京電力と比較すると規模で見劣りがする。これとは別に、中部電力は東芝エネルギーシステムズと中部電力グループのシーエナジーが組んで共同出資会社である「中尾地熱発電」を設立し、今年から岐阜県高山市に「中尾地熱発電所」を建設する。

東北電力も従来いくつかの子会社に分散していた再生可能エネルギー事業を
2015年に「東北自然エネルギー株式会社」に統合した。ただし、水力発電については東北電力本体分を統合しないでいる。また、外部の企業との共同出資による再生可能エネルギーの開発も行っている。九州電力の再生可能エネルギーの開発は主に子会社方式で九電みらいエナジーを設立して風力発電の開発を行っている。

こうして見ると、再生可能エネルギー開発に関しては、大手電力会社の中で東京電力の動きが極めて戦略的で、行動内容、目指す規模なども群を抜いている。何故そうなったのかを考えると、そこには福島第一原発の事故の影響が見え隠れする。事故前、東京電力は原発事業に関して福島と新潟に合計17基の原発を運転し、さらに東通にも建設を進めるなど、関西電力、九州電力などとともに日本の原発開発をリードしていた。しかし事故後は福島第一、第二の全基廃炉を決め、さらに柏崎刈羽は6、7号の2基が新規定基準に合格しただけで、その運転再開もまだ先と見られる。東京電力は原発に関しては福島の廃炉などに重点を置かざるを得ない。関西電力などと違って主要電源を原発に依存出来ない状況になってしまった。

また、現在、電源のほとんどを占める火力発電は設備の老朽化、石炭火力の環境問題などがあり、この先、火力発電への依存過多、環境問題対応の厳しさに直面することは十分に予測出来る。九州などと異なり、首都圏という大消費地を抱え、再生可能エネルギーをさらに受け入れる余地があるなど、大手電力会社の中で最も再生可能エネルギー開発に邁進出来る条件が整っている。原発を失った穴を埋めるには再生可能エネルギーに大きく踏み出すことが一番の策なのだ。原発にこだわり続けた挙句、福島第一原発の事故を起こした東京電力が事故後、再生可能エネルギー開発の旗手となるのは何というパラドックスなのだろう。

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