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見直される水力発電(3)

元国土交通省河川局長の竹村公太郎氏は「いきなりの大雨で洪水を起こさないために常にダムの最大貯水量の半分程度までしか水を貯めていない。根拠は50年前の法律だ。その運用を変えればダムを増設しなくても水力発電量を増やすことができる」と以前から主張してきた。近年、コンピュータを活用した大雨予測の精度があがったため、竹村氏の言うように能力いっぱいまで貯水する運用が実現しそうになっている。

同じような話として、メガソーラーが増えたために各地で電力会社が送電線の容量が不足して系統への接続拒否が起きていたが、東京電力パワーグリッドが先頭に立って送電事故に備えて容量の半分をあらかじめ空ける運用をやめて再生可能エネルギーの電力をもっと流せるように改善した事例がある。これは関係者の間で「東電ショック」と呼ばれ、「送電線が満杯で再エネはもう入らない」と言われていた地域でもかなりの導入が可能であり、莫大な費用での増強が必要とされた関東区域での送電線工事(800~1300億円、期間は9~13年)も不要と分かった。欧米で普通行われている「実潮流(実際の電気の流れ)での混雑管理」とほぼ同じで、欧米のやり方に近づけただけだという人もいる。他電力にも広がる可能性がある。

話を水力発電に戻すと、東京電力は2017年から理化学研究所と共同で、スーパーコンピュータの「京」を使って最新鋭のレーダーで観測した気象データを分析し気象予測の精度を高めてダムからの水量を最適に制御して発電量を増やす研究に取り組んできた。東京電力はこの研究プロジェクトと並行して、AI(人工知能)を活用して水力発電用のダムを最適に運用する技術開発も進めている。

北陸電力は同じく2017年度からJFEエンジニアリングと共同で、「ダム流入量予測システム」の開発をしている。洪水被害防止用として河川水位予測に独自開発したAIエンジンを活用し、蓄積してきたダムに関する過去の降水量、流入量などの実績データから傾向をAIに学習させ、流入量予測データから、発電電力量を最大化する最適なタイミングでのダム操作をAIに提案させるシステムを作った。昨年度からは神通川水系の浅井田ダムで実証試験を開始。流入量予測精度の大幅な向上があった。さらに、同ダムから取水する東町発電所(出力3万2800キロワット)では、年間発電電力量が約500万キロワットアワー増加することを確認した。今後、神通川水系のダム5カ所に実証試験を拡大し、水系全体の発電所8カ所で発電電力量増加を目指す。また、貯水池式の水力発電であれば同システムの活用が可能なことから、北陸電力では有峰ダム、手取川ダム、九頭竜ダムでの活用も考えている。

関西電力は2018年、NEDOの公募事業としてIoTやAIを活用したダムの貯水池運用の効率化・高度化による水力発電所の効率運営の研究を開始した。対象として降雨・降雪が多く、水系全体としての総発電電力量の増量が期待できる黒部川水系を選択した。ダムへの流入量予測精度を上げ年間最大3000万キロワットアワーの発電量増加を目指している。

AIを駆使した新しい運用方法の開発費用は公表されていないが、基本ソフトが出来ればデータの蓄積とともに精度が向上し、適応する発電所が増えてくれば費用はすぐに償却出来る。現在でも水力発電は燃料いらずで、償却の済んだ水力発電所は電力会社にとってドル箱だが、運用変更で貯水量が増加すれば発電による利益はその分増えて電力会社の収支により貢献することだろう。

(つづく)

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