日本エネルギー会議

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ファクターX

京都大学の山中伸弥教授は今回のコロナウィルスによるパンデミックで、日本が特別な対策をとっていないにもかかわらず感染者数や死者が欧米と比較して少ない理由としてファクターXがあるからだろうと推測している。多くの日本人の持っている遺伝子、以前から持っている抗体、生活習慣などその内容がまだわからないのでXなのだ。       

原子力や放射線に対する国民の反応に関してもファクターXがあるのではないか。
NIMBY (“Not In My Back Yard”)は欧米発だが、英米などアングロサクソン、あるいはフランス人は日本人にくらべて原発などに対し寛容なところがある。NIMBYも自分のところはダメというだけで施設の必要性は認めている。特にイギリス人は外国の原発の使用済み燃料の再処理をビジネスとして行い、最近では中国資本まで入れて原発を建設しようとしている。高レベル放射性廃棄物の最終処分場に関しても欧米は日本の先を行っている。

科学は欧米中心に発達したものであり、それに裏打ちされた技術によって自然を征服し近代文明を作り上げてきたという自負心が彼らにある。科学技術は自分たちの手で人間のために作ったもので、使うことにはなんら躊躇しない。欧米では原発などの施設が出来ることで地域の雇用が増えることを素直に評価する。日本のように迷惑料として交付金を配る制度などないし住民も雇用で充分満足している。日本では地元は雇用をありがたいと思っているが口に出しては言わない。危険といわれているものを雇用と引き換えに受け入れたなどと批判されたくないからだ。

日本人が欧米人のように原発を見ていない理由はいろいろ考えられる。まずヒロシマナガサキの体験。JCOの被ばくによる死亡事故。絶えず流される原発関連の事故トラブルや不祥事のニュース。水俣病やイタイイタイ病などの記憶もある。今の世代より先の子孫のことを考える。子孫に迷惑をかけるようなことはしてはいけないと考える人が多い。だから長い半減期、遺伝的影響などと聞くとまず拒否反応が出る。自然を畏敬し、人工物は所詮危ないものだと考えているアニミズムから出来るだけ自然に手をつけないようにするのがよいと思っている。目に見えないもの対する警戒感も強い。

さらに日本人は言葉にも弱い。言葉によって情緒を揺すぶられる。週刊誌などのメディアもそれで稼ごうとする。政府のやることにはまず反対する、小説や映画などで大資本やその配下は政治と癒着し利益追求や出世栄達のため公害などを起こす巨悪という設定が何度となく記憶に刷り込まれている。

原子力の関係者はこのファクターXに随分と悩まされてきた。そして治すのは無理だと半ば諦めている。厳重にすればするほど危ないからそうするのだと揚げ足を取られ、安全と言い切った方が楽だと悟った。重大な事故は起こせない。起きるはずがない。起きないと何度も説明している間に自分でもそう思うようになった。福島第一原発の事故後、ファクターXは一段と強くなったようだ。トリチウムを含む処理水はタンクに入ったままだし、規制委員会が合格を出しても各地の原発の再稼動はなかなか進まない。

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