日本エネルギー会議

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見直される水力発電(4)

福沢諭吉は明治26年に水力利用について「人間の利用しうるべき源は石炭の勢力のみに非ず、他に一大源力の存するあり、水力即ち是なり。わが国は天然資源が少ないというが、気をつけて見れば山高く、水多く、水力発電で電気を起こすには絶好の条件にある」と水力発電による産業の興隆を提唱している。まるで今日の状況を予言したかのようだ。

水力発電用のダムは運用を変えてダム湖の水量を増やせば発電能力は格段に増すが、もうひとつ、パワーアップの方法がある。ダムの「カサ上げ」と呼ばれる方法で、これも水力発電の潜在的な力を引き出す重要な手段だ。カサ上げとは何か。簡単に言えばダムの高さを高くすることだ。高さが100メートルのダムをあと10メートル高くすれば、それだけ多くの水が貯められるし、水位も10メートル上げることが出来る。ダム湖の容量が大きくなり、湖水の水位も高くなり、これが発電力の増加につながる。水力発電ではダム湖の水は量が多いほど効率がよくなり、ダム湖の水位も高いほうがよい。

100メートルから110メートルに上げるのだから、高さ的にはたった10パーセントの違いであるが、発電量では約70パーセントも増える。ダム湖は断面がシャンパングラスの断面と同じで円すい形なので、高さが10パーセント増えると容積は約33パーセント増える。貯まる水の高さの平均は、今まで貯まっていた水の高さの平均の約2倍になる。そして、高さが上がった分だけ、発電量は増えるのだから発電量も2倍になる。発電量としては、両方の効果があるので、0.33×2=0.66となり、発電量は66パーセント増える。実際のダムの場合、いちばん下の水は発電には使えないので、現実的には発電量はもっと増える。

既存ダムのカサ上げ費用は圧倒的に安い。通常、ダム建設事業費の80パーセントは水没補償や、付け替え鉄道、付け替え国道などのダム水没に関連する対策費。既存ダムのカサ上げは、それがないため事業費は圧倒的に安い。なによりも長い地元交渉期間がない。既存ダムのカサ上げはすでに多くの実績があり技術も確立されている。

実際にカサ上げした北海道の夕張シューパロダム(2015年3月竣工)の例がある。元になったのは農地の灌漑を目的に北海道開発局によって建設された農業用ダムである大夕張ダム。これを夕張川・石狩川の洪水調節、灌漑、水道、発電など多目的ダムとして造り変えることになり、ダムの高さを67.5メートルから43.1メートルカサ上げして、110.6メートルにする工事を進め貯水容量を8700万立方メートルから4億2700万立方メートルに増やした。ダムの高さを約1.5倍にすることで、貯められる水が5倍近くにまで増え、北海道営のシューパロ発電所(最大出力28,470キロワット)の発電量もそれに比例して増えた。カサ上げは元のダムの115メートル下流に新しいダムを造り、元のダムは水没させる方法が採られた。

元の大夕張ダム

建設後の夕張シュパローダム(大夕張ダムは水没している)

本シリーズのまとめ
① 設備更新による出力アップ。
② 新たな地点開発、砂防ダムや小水力の活用
③ AIを使った新たな運用方法による貯水量アップ
④ ダムのカサ上げによる貯水量アップ
により、水力発電の年間全発電量に占めるシェアを今後現在の8パーセントから増やすことが可能と考える。特にAIを使った新たな運用方法とダムのカサ上げは、一気に発電量が増加し発電コストも大幅に下がるのでお勧めだ。

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