日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

文献調査で20億円

「北海道寿都町の片岡町長が最終処分場の文献調査に応募する、他の自治体からも問い合わせがある」のニュースを聞いて原子力関係者は正直ほっとしている。
今から寿都町に骨を埋める覚悟の人はいないだろうが、ふるさと納税くらいはやってもよいだろう。昔からの原発反対派は「トイレなきマンション」と攻撃してきたので、ターゲットがひとつなくなるので素直には喜べない複雑な気持ちではないか。寿都町はメディアの取材や外部から入ってくる団体などでかつての高知県の東洋町のように住民が二つに割れて混乱することが予想される。早速、北海道知事は「将来とも道内に処分場を受け入れる意思がないという考えに立つ条例を順守しなければならない」と発言。漁業組合は風評被害を恐れ、小樽地区漁協組合長会が会議を開き、応募に反対することを確認するとともに、片岡町長に対する緊急の抗議文を全会一致で採択した。

自治体が調査を受け入れると、最初の文献調査(2年間)で最大20億円、第2段階の概要調査(4年間)で最大70億円が交付金として支払われる。標準的な原発立地の場合、電源三法の地域対策交付金が建設着工前は年間1.4~5.2億円となっているから桁違いに大きい。国はいくらでも金を出せる。それは原資が税金なり電気料金ですべて国民から出すものであり、あまりにも大きくなれば抵抗が出るであろうが、広く薄くの方式でやると月に何銭である。政治家や役人は次の段階に行ってくれるのなら年間100億円でも出そうとするだろう。

今までに原発や再処理施設を立地した自治体は、放射性廃棄物は県外へとの約束を国に取り付けて地元住民の心配を緩和してきた。今度の処分場は永久であり県外持ち出しはない。そこが大きな差だ。原発のように運転中に過酷事故を起こすようなことはないが風評被害は子々孫々まで覚悟しなくてはならない。交付金だけでなく、調査や建設が始まれば、工事の関係者や見学者が訪れる。このため地域が潤うが、注目度は原発どころではないだろう。

地元からすれば電力供給の恩恵を受けてきた大消費地はその分金銭的な負担は当然であると考える。そうしたなかで「金と引き換えに危険を買った」と言われるのが一番悔しい。かつて敦賀市長は「大阪の人たちは敦賀の方に足を向けて寝るな」と反発している。
 
この問題を複雑にして解けないようにしたのは、いままで政府、電力会社、自治体がその場しのぎを繰り返してきたからだ。また、原子力に反対する団体などが自らの存在感を維持するための何でも反対をしてきたからだ。国は当面あてもないのに、高レベル放射性廃棄物はサイトには残さず県外に搬出、しかも30年後、50年後と期限を定めて約束をしてきた。現地に使用済み燃料が貯まり始めると県に独自に課税することを認め、その税率アップも抑制できなかった。これらは電源三法交付金とは別のものだ。そうしたことは前例となり、既得権化している。電力会社は税金で取られると発電単価に組み込まざるを得ない。これからは自由化で猛烈コスト競争をしなくてはならないのに大手電力会社にとっては大きなハンディキャップとなる。

処分場の着工まで最短でもこれから30年はかかる。その間に各原発では燃料プールから溢れた使用済み燃料を敷地内に乾式貯蔵施設を造って仮置きを続けるしか運転継続する方法がない。これらも自治体の課税対象であり続ける。全国で県と市町村の間で交付金や税金を分け合っているが、その割合についてこれからますます激しい争奪戦が繰り広げられるだろう。原発立地自治体は原発が運転を継続すればするほど増収が見込める。使用済み燃料が六ヶ所村の処理施設や中間貯蔵施設に行ってしまえば減収する。青森県は処分場が出来たあかつきには減収になる。この問題の解決が長引いた方が得なのだ。処分場問題の動向は国からの地方への金の流れにも影響することになる。

全国各地でとんでもない大きな利権が発生し続けているのであるが、元はといえば国民の放射性物質に対する正しい理解にもとづかない嫌悪感によるものだ。原子力を導入した時から絶対安全なものはないこと、放射線の危険性はどの程度のものかなどについて学校教育などで地道に教えなくてはいけなかったが、立地地域に交付金などを配りその財源は消費者、納税者に負わせて済ましてしまった。田中角栄内閣は電源三法をつくったとき、国会で「これは迷惑料だ」と説明している。政府自らが風評被害のもとを作ってしまった。解けない問題の根は深い。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter