日本エネルギー会議

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寺島実郎氏の心配

7月1日に開催された総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会の議事録(第31回)を読んでいて日本総合研究所の寺島実郎所長の意見に思うところがあった。寺島氏はTBSの日曜朝の「サンデーモーニング」のレギュラーメンバーだが、先日放送された番組でも同様の発言をしていた。寺島氏はアメリカのシェールガスプロジェクトなどが金融商品となりデフォルトの危機にさられておりエネルギーがマネーゲーム化していることを憂いたのに続いて、原子力人材の問題の危うさを指摘していた。

「3.11から9年たったのですけれども、私、この委員会にずっと参加させていただいていて、言い続けたボトムラインなのですが、原子力の技術基盤をどう維持するのか、脱原発にも原子力の技術基盤が要りますということで、原子力の技術を支える若い原子力工学の専門家というのが、この9年間で急速に空洞化してきたと思います。そのいわゆる基盤をどうするのか。 -略- 人材の育成、専門家というものをどういうふうに育てていくのかという問題意識が、非常に強く問われてくるといいますか、その局面にあることを再度確認しておきたいと思います。」(分科会の議事録より)

発言内容はごもっともであるが、言い回しがいかにも寺島氏らしく配慮されている。ということはこの危機はもう始まっており、はっきり言えば既に手遅れだと本当は言いたいのだろうと私は聴いていて感じた。少子高齢化で学生の数がどんどん減少して学校間、各学部間で取り合いの状況。研究室を支えているのも日本人の学生ではないのではないか。地方では私立の大学のテレビCMが増えている。電力会社やメーカーでは世代間のノウハウの引き継ぎが大切で、不況時1年間採用を絞ったりするとたちまち現場から人事部門にクレームがくる。企業では定年が延長になっているが、それは問題の先送りにしかならない。運転再開さえままならない現状では、若い人が入社しても、製作せず、建設せず、運転せずではまともな経験が積めない。寺島氏の言う「ボトムライン」のボトムにはもう穴が空いている。

電源の競争力は発電コストや安定性だけではない。その電源の建設、運転、メンテナンスに当たる専門技術者、訓練済みの技能者が容易に確保出来るかも大きな要素となる。高い安全性を求められる原発は最も高度な人材を必要としている。その意味で途上国には原子力発電より火力発電、水力発電が向いていると言われてきた。再生可能エネルギー、なかでも太陽光発電は数ある電源のなかでも最も技術者、技能者を必要としない。この点は多くの論者が見落としている。

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