日本エネルギー会議

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発想を変えた計画づくりを(1)

エネルギー基本計画の見直しにあたって、再生可能エネルギーや原子力のシェアをどうするかに注目が集まっている。経済産業省が廃止する方針を打ち出した低効率石炭火力分を何が補うかを考える必要もある。だが、基本計画づくりでいま大切なことは発想を変えた計画づくりをすることではないか。

発想を変えなくてはいけない理由の第一は、日本のおかれた状況がかつてないほど厳しく国力は下降線をたどることだ。日本社会は人口減と少子高齢化により急速に活力を失い、学術、経済、文化、軍事などほとんどの分野で世界における地位を失い、過去の遺産に頼る時代も終わろうとしていることを直視する必要がある。戦後積み上げてきたものは外貨準備にせよ、インフラにせよ、企業体力にせよ、特許にせよどんどん弱体化していく。人口構成、1人あたりのGNP、学術論文数、企業の国際競争力など、下降する指標はいくらでも見ることが出来る。自然災害の増加と復旧の遅れも国力低下につながると懸念される。また、専門家は大地震や津波の発生も間近に迫っていると予測しており、実際に起きれば大損害になる。

発想を変えなくてはいけない理由の第二は、世界で従来にない科学技術の進歩の速さである。ITやAIの取り込みは技術のあらゆる面で起きており、それが社会のあり方や人間の行動をも変え始めている。その成果は幾何級数的な勢いがあり、「日進月歩」という言葉が遅く感じられる。これに対して科学技術以外の分野や社会システムは、まるで止まっているように見える。中には戻っているのではないかと思うようなことさえ起きており、そのギャップはどうにもならなくなっている。

発想を変えなくてはいけない第三の理由は、世界秩序の地殻変動とも言うべき不安定さの増大である。冷戦終了後のアメリカの経済・軍事パワーを使った国際的な秩序維持は過去のものとなり、大国も小国もグローバリゼーションの影響もあって国内が安定しないまま自国ファーストの傾向を強めている。中国は覇権を目指し、それに対抗する国々と敵対関係になりつつある。当然、エネルギー資源の分野でもこれまでに日本が作り上げた関係が明日はどうなるかわからない状況だ。

発想を変えなくてはいけない第四の理由は、温暖化に対する認識の変化である。ドイツなどEU諸国がリードしている温暖化対策は、アメリカがトランプ大統領によって一時的に遅れをとってはいるが、各国は中国も含め日増しに厳しい態度に変わっており、日本の温暖化対応、特に火力発電の大きな存在に海外からの冷たい視線が集まっている。

エネルギー基本計画を時間をかけて作り上げても、情勢の急激な変化によって出来た時点ですでに陳腐化した計画になっていることが大いにありうる。今から10年後の2030年、30年後の2050年となると、よほど将来を見通しておかなければ3年後の計画見直しの時期にも既に実態に合わなくなる可能性がある。前回の第5次計画をいま見ると見通しの甘さが各所に見受けられる。計画策定時に将来の変化を織り込むことができていないからであり、また現状からの変更を出来るだけ少なくして産業界や国民に衝撃や不安を与えないよう配慮してきたからである。そうした配慮や慎重さはエネルギー、電力供給が産業活動や人々の生活に一瞬も欠かせないものであるためだ。であるならば、逆に今後の変化の激しさを正しく反映した計画にしなければ、計画破綻によって産業活動や人々の生活が本当に立ち行かなくなる。

次回は「今後の変化の激しさ」をエネルギー基本計画に反映するとは、どういうことかについて。

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