日本エネルギー会議

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発想を変えた計画づくりを(2)

変化の激しさをエネルギー基本計画に反映するとはどういうことか。前回示した「発想を変えなくてはいけない四つの理由」に従って考えてみた。
(四つの理由)
1. 日本の国力が下降線をたどること
2. 驚くべき科学技術の進歩のスピード
3. 世界秩序の地殻変動が引き起こす不安定さ
4. 日本の温暖化対応への海外からの批判

日本の電力需要は2007年がピークで2011年に1兆キロワットアワーを切り、その後も下がり続けている。以前のエネルギー基本計画では2015年から2030年まで、年率1.7パーセントの経済成長を続けるという予測を前提にしていたが見事に外れている。何故、予想が外れたかは説明がないままだ。国の基本計画がこのようなことでは困る。

発想を新たにした計画づくりの第一の論点は、計画づくりの方針を供給力確保から需要抑制へと転換することだ。人口減少はいまから加速する。省エネ努力も続けられる。これからも電力需要は減少傾向が続くものと考えるべきである。電気自動車が普及すれば新たな需要となるが、全体として需要は減少傾向にあるので、発電設備を作り過ぎないようにしなくてはならない。

従来は需要があればそれに応じた供給をするといった考えであるうえに、オール電化などといって電力消費を喚起することも行われていた。しかし、今後はそのような考えで基本計画を作るべきではない。逆に需要を抑制する、同じ量の電力を有効に使うことに留意した計画にしなくてはならない。 

供給力を減らす場合、まず火力発電が候補となる。火力発電は海外から輸入するエネルギー資源を燃料として使っており、これからの国際収支を考えれば極力減らさねばならない。また国際情勢を考えれば、燃料輸送リスクと価格高騰リスクを減らしたいところだ。また国際的な脱炭素の圧力もある。早期に縮小をかけ、2050年にはバイオマス発電以外は火力発電を全廃するくらいの目標にする必要がある。

第二の論点は縮小した供給体制を確実に維持することだ。少子高齢化と人口減少で心配される電力供給にかかる人材の確保と育成をしなければならない。国として限られた有能人材を各主要産業や行政機関に使うため、電源はなるべく扱いやすいものにすべきである。かつて開発途上国には複雑な装置ではなく単純な設備が適しているとしていたが、これからの日本にもそれが言える。幸い、主力電源化を目指している再生可能エネルギーは比較的単純な設備である。

第三の論点はいかにして設備を最新のものにするかである。従来にない科学技術の進歩の速さは、設備の陳腐化が速いことを意味しており、長期間の償却期間を必要とする設備は簡単に廃棄出来ず不利である。太陽光発電のように設備の耐用年数が短ければ、設備更新の際に最新式の効率のよい設備になり、同じ設備を長期間使い続ける水力発電、火力発電、原子力発電などは不利である。現状では民間企業は多額の資金と運転開始までに長期間を要する水力発電、原子力発電を建設しようとする動機を持てない。電源のバランスを取るにはこれらの建設、運転に対して国が一定の利益保証をする制度をつくる必要がある。

第四の論点は国際的にも高い電力料金の引き下げだ。そのためには発電設備の利用率の向上が決め手しなる。電力需要は夏の冷房、冬の暖房による需要の山がある。一日では深夜に需要が大きく落ち込み、朝と夕方にピークが出る。これを年間、昼夜を問わず一定にすることで、設備利用率は100パーセントにすることが出来る。現在、火力発電所の利用率は約55パーセントにとどまっている。全国の火力発電の利用率1パーセントの改善で、年間1000億円の利益が生まれるという。再生可能エネルギーの利用率は10~30パーセントとしているが、自然が与えるエネルギーとしては100パーセント利用していると考えることが出来る。(太陽光があり、風が吹いている限り発電は行われ
ている。これに対して火力発電は需要によって発電するかを決めている)

これまでは需要曲線に応じて供給するという方式であったが、これからは供給曲線に合わせて需要をコントロールする方式を採用すべきである。利用率の悪い発電装置を数多く造って遊ばしておくよりは、需要曲線を一定にするためにデマンドコントロールに投資したほうがよい。昼間の太陽光発電による電力を揚水式水力発電や蓄電池(発電側と消費側がある)により貯蔵しておき需要に合わせて放出する方式は今も行われているが、国としてさらに拡大すべきである。蓄電や需要抑制も電源のひとつと考えてエネルギー基本計画に目標や手段をしっかりと書き込む必要がある。

第五の論点は供給体制の強靱化である。災害多発に対応するためには電力供給の多重化が必要となる。昨年、北海道では地震により、千葉県で台風による大規模な停電が起きたが、これは全国どこでも可能性がある。電力の需給だけを問題にするのではなく、安定供給保障を計画のひとつの柱にするべきだ。

消費側での非常用電源を備えるとともに各電源と送配電設備の強靱化と送電ルートの多重化をする必要がある。また、地域間の連係線の拡充も計画に盛り込む必要がある。大きな構想として日本列島をぐるりと取り囲む海底直流送電ケーブル敷設が考えられ、洋上風力発電を日本の主力電源にする場合にも有効である。

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