日本エネルギー会議

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 風速80メートル下の電力供給

日本に大型台風が来るたびに起きるのが停電だ。近頃、日本近海は海水温が高いので、台風は大型化しスピードも遅い。昨年9月に千葉市付近に上陸した台風15号は大停電を引き起こしたが、それでも最大瞬間風速は57・5メートルだった。今年、台風10号の最大瞬間風速が80メートルと予測されたが、実際は50メートル台だった。それでも九州で40万戸以上が停電した。

もし風速80メートルだったとするとそれこそ未曾有の大停電が起きただろう。発電所などの電源、送電線、変電所、消費地の建物のどれかが損害を受ければ停電は発生する。それぞれが強靭性は異なるが一番弱いところに被害が出て即停電になる。

対策は二通りある。ひとつは設備そのものが風で破壊されないようにすること、もうひとつは強風で飛ばされた物体が衝突して破壊されることを防ぐことだ。先週も飛んできたビニールハウスで新幹線がストップした。これに対する再発防止は極めて困難だ。

今年8月に自然エネルギー財団は、「2030年エネルギーミックスへの提案:自然エネルギーを基盤とする日本へ」を公表した。それには「二度と原発事故の惨禍を招くことがないように、また気候危機によって人々の生命と財産が脅かされることがないように、自然エネルギーを基盤とする日本への道筋を選択する必要があります」「今回の提言では、適切な政策的措置が行われれば、2030年に電力の45パーセントを自然エネルギーで供給できることを実証的に示しました」とあるが、メガソーラーや風力発電所は強風に弱いことは書かれていない。長所だけを強調し短所を示さないのはよろしくない。主要電源になるためにはそれだけの強靭性もなくてはならない。再生可能エネルギーは分散型電源とはいえ、設備容量が巨大化したりシェアが大きくなれば影響は少なくない。

現在、主力の火力発電、原子力発電も強靭性はあるが大型台風による高潮や擁壁崩壊による被災も考えておく必要がある。福島第一原発の事故の際の海水が施設内に流入して重油タンクなどが浮き上がった写真が印象に残っている。それらをクリアーしても送電線や消費地の被災によっても発電所は停止する。先週も韓国で4基の原発が同時に停止した。原因は発電設備ではなく送電線か消費側の事情だと思われる。日本でも送電線に落雷して原発が停止した事例がある。

風速80メートル下で電力供給を続けるにはどうしたらよいのか。電柱の地中化は行われようとしているが時間がかかる。それより千葉県で起きたように送電鉄塔の倒壊が起きた場合は長期の停電の原因になる。鉄塔そのものの強度があったとしても多くは山間部にあり、台風の大雨により基礎が崩壊する可能性が高い。送電線の復旧は電柱のようには簡単ではない。この問題はメガソーラーや風力発電も同じである。

長距離の送電線の地中化は経済的に出来ないので、新幹線や高速道路に沿って送電線を敷設することが考えられる。これなら用地買収は必要がないが、それでも技術的問題、費用の問題があり、完成するには数十年を要するだろう。電力供給面では最大瞬間風速80メートル対策は今すぐに出来ることはほとんどないということであり、大型台風がこれ以上増えないことを祈るしかない。福島第一原発の事故でわかったような日本人のリアリティのなさ、考えたくないものは考えないという態度が変わらなければ、これからも大停電が起きるだろう。

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