日本エネルギー会議

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誰も知らない容量市場

電力がどのように取引されているかを知っている人は少ない。自由化以前は各地域で9電力会社が独占していたので取引はなく、自由化後は発電事業者から小売業者が電力を購入する卸売市場で取引が行われている。また、ピーク時などに調整するために調整市場も設けられている。

今回、我が国で自由化の下でも将来の電源が確実に建設されるよう、海外を参考にして容量市場が創設されたが、そのことは関係者以外にはほとんど関心が持たれていない。新聞などでも扱いが小さく内容もわかりにくい。先の二市場との関係やこれによって消費者がどのような負担をするようになるかの視点から記事が書けていないからだ。

これからは、発電事業者は容量市場に登録をしなければならず、小売事業者は容量を確保していなければ卸売市場で電力を買うことは出来ない。そのため、小売事業者は将来の需要を見込んで金を払って容量を確保しておく必要がある。一方、発電事業者は卸売市場で収入を得るだけでなく、容量市場で予約料のような形で収入を得ることが出来るようになった。(ただし、予定の時期に発電設備が出来ていないとペナルティが発生する)。この容量市場を作ったことで、発電事業者は発電設備に対する先行投資をしやすくなった。現在所有している発電設備も対象になるので経営は安定する。それがこの制度の狙いだ。

では、消費者への影響はどうなるのか。小売事業者はこの容量確保のための費用を当然、消費者に転嫁してくる。消費者も安定的な電力供給を確保するために応分の負担を求められるのだ。消費者が払う電気料金についてはこれまでも原発など大型電源開発を推進するための電源開発促進税と消費税が料金の中に含まれており、これ以外に燃料費調整(プラスとマイナスがある)、再生可能エネルギーの拡大のための賦課金が上乗せされている。これから予想される上乗せもある。福島第一原発の廃炉費用や全国の原発が万一事故を起こした場合に備えた賠償費用の積立など、これらは託送料金などに上乗せされ、結果的に消費者の支払う電気料金が膨らんで行く可能性が強い。こうした状況は火力発電や原子力発電を中心にした大手電力会社、メガソーラーや風力発電を中心とした新電力のいずれに対しても消費者が背を向ける原因になりかねない。

工場や事務所にせよ、一般家庭にせよ、太陽光発電装置と蓄電池を設置して電力の自給自足をある程度達成してしまえば、いままで述べた税金や賦課金や容量市場に支払う予約金が上乗せされた電力を買う必要がなくなるからだ。小売事業者がつないでいる電線は非常の際に小売事業者から買うためのものになる。

調査会社の米ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによると、過去10年間でソーラーパネルの価格は77%、リチウムイオン電池の価格は87%低下した。それでも価格はさらに下がると予想されている。日本でも大きな工場でソーラーパネルや蓄電池を設置して自給の電気の割合を増やしたり、家庭でもFIT終了後は蓄電池を買って自給自足に近いことをしようとする動きが出ている。(実例をユーチューブで見ることが出来る)これから売電目的ではなく自分で使うためにソーラーパネルを設置しようとする家庭も増えると予想される。

そうした企業や家庭は小売事業者から電力をほとんど買わないので消費税、賦課金、福島原発廃炉費用、原発事故に備えた賠償積立、容量市場の予約代とは無縁だ。そのメリットを求めて自家発電自家消費が増えてくれば、発電事業者⇒小売事業者⇒消費者のルート上で、税金や賦課金などを浅く広く徴収しようという今の制度は根本から崩れてしまう可能性がある。発電事業者を支援しようという制度が、消費者の離反を招いて発電事業者や小売事業者を窮地に追い込む。なんとも皮肉なことだ。

送電線に頼らずに電気を使う日はそう簡単には来ないと考えるのが普通だが、コスト次第では急速に来るかもしれない。また、そうならなければいつまでも高い電気代を払うことで生活が圧迫され続け、国内企業の国際競争力は低下し続けるだろう。

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