日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

電力各社の海外事業

日本の電力会社は海に囲まれ地域独占で守られた典型的な国内産業だったが電力自由化により取り巻く環境が一変した。さらに福島第一原発事故で火力発電中心に逆戻り、設備は経年劣化が進み人口減少と省エネで国内需要が先細りするなか新電力に需要家を奪われ、電力会社同士が顧客を奪い合うことになった。原発の再稼動も費用ばかりかかってなかなか進まない。再生可能エネルギーの開発は国内では完全に出遅れ。実績のある石炭火力でも海外進出は政府が打ち出した温暖化対策のため見通しが不透明になっている。

こうした状況を打開するため、各社は海外事業にシフトし始めた。かつて電力会社の海外事業は華々しく紹介されるがいつの間にか消えてなくなるのが常だった。唯一の例外がJパワーの海外事業。こちらは火力発電と水力発電が中心で歴史も古い。今回はJパワー以外の各社も本腰を入れて海外事業に取り組もうとしている。何をするにも東京電力、関西電力、中部電力のいわゆる中央三社が資金力、人材の豊富さを活かしてその他の電力会社をリードするが今回も同じだ。また、最近目立つのが低炭素化と収益拡大を狙い再生可能エネルギーで海外進出をしようとする動きだ。

東京電力は商社と提携しタイ、インドネシアの火力発電所(合計80万キロワット)に共同運営、共同出資の形をとっている。また、以前から関係会社のユーラスエナジーホールディングスを通じて、欧州、米国、南米、アジア太平洋で再生可能エネルギー事業を展開している。同グループは281万キロワット(2433基)の風力発電設備と太陽光発電設備(13ヶ所)を運営している。

中部電力は昨年秋、三菱商事と共同でオランダの電力会社エネコの買収に乗り出した。総額5000億円(中部電力はそのうち1000億円)で、経常利益の3割を海外からの収益にすることと、再生可能エネルギーの設備容量を倍にする経営計画に基づいている。エネコ社は洋上風力に強く、これから日本近海での洋上風力発電に進出するためのノウハウの取得も目論んでいる。

これとは別に東京電力との共同会社JERAの海外事業からの利益も見込める。福島第一原発の事故直後、政府から浜岡原発の停止を求められ受諾。会長が燃料確保のためLNG供給国を電撃訪問したり、浜岡原発の耐震基準を、他社を尻目にいきなり1000ガルに引き上げたりした中部電力の積極経営は健在だ。中部電力は2019年度から5年間で、再生可能エネルギーや海外事業などに3000億円以上を投資する方針を掲げている。

関西電力は今月、米国テキサス州の陸上風力事業に参画すると発表した。ヒューストンの北西550キロメートルの内陸部で建設中の米国最大級のアビエータ陸上風力発電所(52万5千キロワット)について、運営事業者の株式を48.5%取得する。8月に商業運転を開始する予定で、発電した電力は主にフェイスブック(FB)とマクドナルドに供給する。今回の出資により関西電力の海外事業持ち分出力は286万1千キロワットとなる。こうした三社と比較するとそれ以外の会社は規模もスピードも見劣りする。

北海道電力は今年5月メキシコの太陽光発電事業に出資参画した。再生可能エネルギー発電事業に国内外で参画する手始めに投資会社を通じて現地で太陽光発電事業をする会社へ初めて出資した。北海道電力の持ち分出力は全体の12%にあたる3万4800キロワットに過ぎない。

東北電力は昨年春、商社から株式を買うかたちでベトナムの石炭火力発電事業(60万キロワット2基)に出資。全株式の10%を保有している。再生可能エネルギーとしては、インドネシア南スマトラ州のランタウ・デダップ地熱発電事業(9万8000キロワット)に参画している。東北電力は秋田県や岩手県での地熱発電の経験がある。

北陸電力は「北陸電力グループ2030長期ビジョン」のなかで、海外進出を打ち出し、その実行として今年4月に「Japan Energy Capital1号ファンド」に出資を決めた。同ファンドはトルコとヨルダンで再生可能エネルギー事業を行うことになっている。

中国電力は4年前、マレーシアの超々臨界圧石炭火力発電事業(出力200万キロワット)に出資。出資比率は15%。この他に台湾の洋上風力発電や,ミャンマーの天然ガス火力発電に出資している。2年前にアメリカコネチカット州の営業運転中の天然ガス火力発電事業(出力62万キロワットに出資。出資比率は16%。昨年にはインドネシアの既設水力発電所に出資した。出資比率は25%。

四国電力はカタール、オマーン、チリ、アメリカ、アラブ首長国連邦、インドネシア、台湾、ミャンマーの火力発電事業に出資。海外事業の持分出力は合計で71万キロワットとなっている。再生可能エネルギーの海外事業に関してはこれからだ。

九州電力は成長性が高いアジアを中心に海外事業を展開。2030年には海外事業の持分出力を500万キロワットまで伸ばすとして中央三社以外では唯一高い目標を明らかにしている。

我が国が商業用原発を導入した際、共同で日本原電を設立して東海原発、敦賀原発を建設しながらも、同時に中央三社は自社の原発の建設に入った。その他の社も原発建設計画を進めようとし、優秀な人材と巨額の資金を注ぎ込んだが、それは地域独占と総括原価方式が支えてくれた。今回の再生可能エネルギーを含めた海外事業ではその支えがない。それだけに失敗すれば経営へのダメージが大きいものになる。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter