日本エネルギー会議

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モラル破壊の心配はないのか

高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定手続きの第一段階である文献調査の受け入れを泊原発に近い北海道の寿都町と神恵内村が決めたことが原子力界の今年の10大ニュースになることは間違いない。第一位になるかもしれない。テレビで見ていると梶山経産大臣は町長らに感謝の言葉を繰り返し、NUMO理事長は「1センチ動いただけ」と言いながら笑いが止まらない様子だ。いままで反対派から「トイレなきマンション」とさんざん言われてきた原子力の関係者は一様に歓迎し、ホッとしている。 

文献調査の2年間で最大20億円が二つの自治体にそれぞれ入る。知事は反対しているので、知事が替わらなければ次の実地調査には進まずにこの話は終わりになり20億円はもらい得になる。町長や村長は真面目なお人柄のようだが、そんなつもりはなくても次に進まないことを表明したとたんに最初から食い逃げするつもりだったのだろうと疑いの目で見られる。それでも町のためなら批判もあえて受けるという根性はお持ちのようだ。

経済産業省の官僚は「申請は10箇所くらい欲しい。200億円も高い費用ではない」と言っているようだが、辺野古の海の埋め立てと同じで理解しがたい金銭感覚だ。土地を買うために調査させてもらうのに土地の価格よりもたくさん持ち主に金を払うのは一般社会の常識からあまりにもかけ離れている。少なくとも文献調査がオーケーなら次に進むことにしなければ税金を使うのはおかしい。それに日本は知られていない断層、火山噴火の跡がゴマンとある国だ。第二段階の現地調査終了後にオーケーになる土地がそれほどあるとは考えられない。だから官僚は10箇所と言うのだろうか。

もとはといえばこの破天荒なルールを作った国が悪いのだが、これがまかり通れば、国民のモラルが壊されてしまう。二つの自治体が先鞭をつけたので、もう申請自体は抵抗感がなくなり、やらなければ損と考えるところが出てくるに違いない。それが国の狙いでもある。「タダより高いものはない」というが、この場合は「タダで金がもらえる」という話だ。いったい何を根拠に20億円なのか。納税者には一切説明がない裏金のようなものだ。

安倍政権の国会答弁はとても子供たちには聞かせられないものだったが、今度の一件も子供たちに説明するのは難しい。このルールを考えた官僚は「してやったり」と思っているかもしれないが、高レベル放射性廃棄物の最終処分場を見けるためには国民のモラルを壊してもよいとするべきではない。メディアにもこうした批判論調があまりないのはどうしたことか。

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