日本エネルギー会議

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JERAの勝算

菅首相は本日召集された臨時国会で所信表明演説を行い、温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロとする目標を宣言した。ようやくという感があるが、実はJERAが今月13日に2050年に事業活動における二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする目標を発表している。菅首相の宣言は二番煎じで、何故JERAが10日も前に同じ内容を発表したのか興味がある。

世界の投資家がESG(環境・社会・ガバナンス)重視を強めており、日本の三大メガバンクも石炭火力に対する投資をしないことを決めているなど投資家対策、金融機関対策も急がれていた。火力発電が業務のほとんどであるJERAが首相の演説によって企業イメージを損なうことを最小限にしようとしてダメージコントロールを行った可能性もある。

JERAは2015年に東京電力と中部電力の火力部門を統合するために折半出資で作った世界最大級の火力発電会社だ。JERAは日本の火力発電所の約半数を保有し、日本の電力の3割を供給している。石炭火力から天然ガス火力へ大きな転換をしていることも特徴で、売上高3兆円に迫る巨大企業で、同社の発表が他社の火力発電に与える影響は大きい。

火力発電所は緊急に電力が必要な場合すぐに起動出来、出力調整が自由、出力も大きく安定的なため、出力不安定な再生可能エネルギーの拡大には欠かせない存在だ。JERAが早々と実質二酸化炭素排出ゼロ宣言をしたその裏には勝算があるとみるべきだろう。同社の発表によれば非効率な石炭火力を廃止するだけでなく、火力発電所の燃料を水素などに転換する。まずアンモニアと石炭を混ぜて燃やす試験を開始して、水素については2030年代から実際の火力発電所で水素を使用する計画だ。日本の火力発電所は日本のメーカーによって建設、保修が行われており、原発以上に長い歴史を持っている。水素を燃料とした火力発電も日本メーカーに依存するところが大きい。

三菱日立パワーシステムズは、水素を燃料とした火力発電設備をアメリカユタ州の独立電気事業者から水素を燃料として利用する発電システム(84万キロワット級)に変換する工事を受注し、再生可能エネルギーで製造した水素で2025年に水素混焼率30%、2045年までに水素100%での運転を目指している。天然ガス火力発電所を水素専焼火力発電所に転換する技術も開発されつつある。三菱日立パワーシステムズは、オランダのエネルギー企業のプロジェクトにも参加し、天然ガス火力の水素専焼発電所への転換も可能であることを確認したとしている。水素を燃料とする火力発電の技術的可能性は十分なように見える。

問題は水素のコストが石炭火力や天然ガス火力と比べて高いことだ。2030年までに1kwh当たり17円まで下げることを目標にしているが、それでも石炭火力の約2倍だ。さらに水素を燃焼させた時の窒素酸化物の排出量が石炭などより多く、これを低減させるための技術開発が求められる。また、発電に使う大量の水素を安定して供給できる体制の整備もしなくてはならない。

首相演説で「火力発電はもう終わりだ」と考える人も多いかもしれないが、世界の風潮に抗して火力発電の生き残りに賭けているJERAと日本のメーカーに期待したい。

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