日本エネルギー会議

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果物王国の行方

福島県は果物王国だ。特に中通りと呼ばれる東北新幹線沿いはサクランボから始まって桃、梨、ブドウ、柿、リンゴと切れ目なく果物が生産される。太平洋岸では相馬地区で早春にイチゴも採れる。また、福島第一原発のお膝元の大熊町ではおいしい梨が採れることで有名だった。県民はいつもおいしい新鮮な果物を季節ごとに食べるのが楽しみ。ただ、大熊町の梨は原発事故ですべて失われ再開の目処は立っていない。

県民はスーパーなどで買う以外に、直接果物農家に行って収穫を楽しんだり、直接購入したりしている。福島市の西側、吾妻山の麓にはフルーツライン、ピーチラインと呼ばれる道路があり、果樹農家が観光客相手の店を出している。

福島第一原発の事故以来、果物だけでなく農林水産物への風評被害が続いたが、ここにきてようやく果物の出荷は元に戻った感がある。ところが果物自体がうまく作れなくなり、良い品物は庶民には手が届かなくなる異変が起きている。原因のひとつは温暖化により天候が不順であり従来の果物の栽培には向かなくなっていることだ。またしばしば台風や洪水の被害にも見舞われる。今や全国的な問題であるが、福島県の果樹農家も気候変動対策に苦労して生産を続けている。

もうひとつの原因と見られるのが流通である。インターネットやテレビの通販により全国から好みのものを取り寄せられるようになり、品質の良いものは全国のファンが高値で買うようになり、地元だから安く買えるということがなくなった。さらにこの傾向に拍車をかけたのが輸出である。みずほフィナンシャルグループの佐藤会長は今月、輸出振興について「中国の富裕層はメロン1個1万円でも買ってくれる。岡山の桃を食べるためにプライベートジェトで来日するアメリカ人もいる」と述べている。グローバリゼーションがここまで影響していることがわかる。

だが、そのために地元の一般の人々がこれまでのようにリーズナブルな価格でおいしい果物を食べられなくなってよいものだろうか。以前、コーヒー豆の産地であるエチオピアでは、豆は輸出用なので地元の住民は豆を取り出した殻を挽いてそれをコーヒーとして飲んでいるという話を聞いたことがある。日本もいよいよ途上国並になったようだ。中高年層は昔の味がよかったとわかるのだが、若年層は今の果物の味、値段が当たり前と思っている。日本の食文化が失われつつあり、これは本当に由々しき事態である。

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