日本エネルギー会議

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食い物の恨み

テレビはグルメ番組全盛だ。三つ星レストランから外食チェーン、場末の居酒屋から駅弁までたくさんの番組があってどれも長続きしている。旅番組も必ずと言っていいほど食事のシーンがある。食は胃を満たすだけでなく心も満たしてくれ、コミュニケーションの場でもある。

福島第一原発の事故で浜通りから避難して10年にもなるが、いまだに広野町から南相馬市にかけての国道6号線沿いにあった行きつけの飲食店がなつかしい。避難する前は月に何度かは出かけていたが、どの店もしばらくするとまた行きたくなった。現在は避難して中通りの国道4号線沿いで暮らしているが、比較すると浜通りの方が飲食店の数は少なかったが庶民的な店が多く、味も上だったような気がする。

今でも思い出すのは、富岡町の2F近くの手打ちうどん屋の「なべや」の鴨うどん、双葉駅前のラーメン屋の「大幸食堂」の塩ラーメン、浪江町の大衆食堂の「おおむろや」の丼もの、原町駅前の喫茶店「憩い」のほうれん草スパゲッティなど。菓子パンや柏餅のおいしい店もあった。値段もとてもリーズナブルだった。現在までに地域の一部は避難指示を解除されているが店は戻っていないものがほとんどだ。どの店も繁盛していたから、避難した多くの住民が避難先で同じように味をなつかしがっているはずだ。

このような状況にあることは、家などの財産と違い補償の対象ではないが、味はそれぞれの記憶にあり、原発事故がなければいまでも食べに行くことが出来たはずで残念だ。東京電力は精神的損害賠償に故郷喪失の意味も込めているとしているが、それとも違うような気がする。食が人生の楽しみのひとつであることは紛れもない事実であり、食いしん坊の私にとっては原発事故がこのような楽しみを奪ったことを是非とも書き留めておきたいのである。

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