日本エネルギー会議

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何故記録しようとしないのか

今年六月末、福島第一原発の事故に関して政府の事故調報告が出たタイミングで、双葉町の井戸川町長が、毎日新聞の取材に対し、双葉町独自に事故を調査・検証をして報告書をまとめる考えを示した。東電や政府の双葉町に対する対応、双葉町民の避難経緯などを調査する方針だそうだ。福島県を含め、県内の自治体では初めてのことだ。
私が原発事故による避難の体験談を書き始めたのは事故後一ヶ月ほどしてから。それが秋には平凡社から新書で出版された。読み物としての評価は別として、記録としても貴重だ言われた。それでも、書いているときは、記憶が定かではなく、妻にはよく違いを指摘されたものだ。それほど、記憶は薄れてくるのが早い。双葉町の関係者は記憶をたどるのに苦労するだろう。
昨年後半から、東日本大震災の津波や原発事故に関して、新聞社の記録写真集や個人が体験を綴った本が数多く出版され、県内の書店では特設コーナーに山積みとなった。富岡町では広報誌に町民の避難の体験談を毎号掲載した。不思議なことに、県をはじめ各自治体で、この原発事故に対してどのように対応したか、組織的に実録をまとめようとする動きはこれまでなかった。
福島第一原発の事故という世界的にも注目を集めている事故を経験した自治体が、その記録を残さずにどのようにして他の原発立地の自治体に、また、後の世代に顔向けが出来るというのか。事故発生から一年有余、県知事や各自治体の首長は、福島第一原発の事故はまだ終わっていないと主張している。であるなら、なおさらのこと急いで、組織として今までの経緯をまとめておくべきではないか。
今回の事故で県や町村は原発事故への備えがまったく出来ていなかったこと、能力が不足していたことが明らかになった。今回、事故発生直後に国からの連絡や支援がなかったことなど、自治体として大きなハンディを背負ったことは確かである。それでも、各自治体の長は対応に当たった役所の職員、消防、警察、病院、学校など関係諸機関の職員から当時の事を聞き出し、整理記録し、分析して今後のために使えるようにしておく責任がある。また、双葉町がやろうとしているように、いかに国のせいで自治体の対応が影響を被ったかについて、はっきりとしておかなくてはならない。そして、遠くの自治体やNPOから、どれほどの支援を受けたかについても、しっかりと記録することが務めであると思うのだがどうだろうか。

2012.7.31
北村 俊郎

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