日本エネルギー会議

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原発立地自治体の存続

先日、政府が財物の補償に関する方針を決めたことで、原発事故の避難者に対する東電の財物補償が進みそうだ。これをきっかけに、各市町村も政府の区域再編や中間貯蔵施設の話が動くと見られる。そうなれば、区域に応じて、精神的損害賠償についても一括先払いが行われる見通しだ。
このように今年から来年にかけて賠償問題が大きく前進すると、避難していた人々もいよいよ新しい生活設計を立てなくてはならなくなる。例えば、帰還困難区域に家を構えていた平均的な四人世帯の場合、家や土地の補償に加えて精神的損害補償5年分一括支払で合計数千万円を手にすることになる。家や土地を所有していなかった若い世代であっても、四人家族であれば、三千万円程度の補償金が入ってくる。
5年以上は帰還出来ないとなれば、当面どこで暮らしていくか。各町村は帰還できるまでの間、仮の町(公営住宅)をいわき市や郡山市、あるいは解除された町村に造り、そこでまとまって暮らすことで、帰還につなげようとする構想を立てている。しかし、そこは避難している人々が望んでいる場所とは限らない。そもそも持ち家をしていない年齢の若い世帯を中心に、元の町村には戻らないと考えている世帯が多い。現在の避難先で仕事を見つけたり、子供が学校に通い始めたりしていれば、引き続きその場所に居ようとする気持ちは思いのほか強い。そして仮設住宅や借り上げ住宅の退去を機に、自分で中古住宅を取得したり、新築したりしてしまう。それが出来るだけの金は入ってくるからだ。住民票も移動してしまえば、元の町村からは縁が切れる。たまには元の町に行くこともあろうが、それは盆に実家に戻るようなものだ。政府は旧警戒区域内の除染をするとは言っているが、数年後にどの程度の放射線レベルになっているのか。子供のいる世帯はいまだに放射線に対する抵抗感が強いままだ。
こう考えると、現時点で区域解除されていない大熊町、双葉町、富岡町、浪江町などは、6年後に解除されたとしても、就労している世代は抜け落ち、戻るのは高齢者の世帯だけになる可能性が高い。彼等は年金生活であるから、職場の心配はないが、買い物、病院、介護などのニーズが高い。原発のおかげで豊かだった立地自治体の財政は、今後は厳しいものになるはずだ。人口減少に伴う議会議員数や役場職員数の削減、町村合併も進めなくてはならなくなりそうだ。賠償の実施による各個人の生活再建の進展が、自治体の存続を脅かすことになりそうだ。

2012.8.1
北村 俊郎

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