日本エネルギー会議

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すべては報告書が出てから

政府事故調の畑村委員長は会見で、7つの所感を述べたが、その第一に、「あり得ることは起こる。あり得ないと思うことも起こる」と言っている。これを聞いたとたん、班目原子力安全委員長がかつて、「そこまで考えたら原子炉の設計は出来ない」と言ったことを思い出した。畑村氏の発言は「可能な限り安全な設計と運用を。それでも、万一事故が起きた場合の備えを忘れずに」と下の句が続くのだろう。班目氏の方に下の句はない。
福島第一原発の事故は「あり得ることで、起こったこと」である。「二度とこのような事故は起こしてはいけない」と思った人は、少なくとも各事故調が調べ上げた事実やその他、入手出来る限りの記録に照らして、設計と運用の見直しと万一事故が起きた場合の備えをしなければならないはずだ。事故から一年以上が経つが、国、各電力会社、各自治体では、どのような改善がなされたのだろうか。また、いつまでに何をやるという計画が立てられて、予算がついているのだろうか。そのことをメディアもほとんど報じていない。
問題は津波対策の防波堤に電源車にとどまらないはずだ。今、次の大事故が起きた場合、官邸はまた五階で対応するのか、それとも地下室でやるのだろうか、福島では伝えられなかった周辺自治体にはどのように伝えるつもりなのだろうか、サイトの夜間休日の動員体制はどうするのがろうか。すべては事故調の報告が出てからと、漫然と過ごしていたのではないか。そのいい加減な感覚が、福島第一原発の事故の混乱を作り出したのだと、どの事故調も口を揃えて断罪している。

福島県内のテレビでは毎日、ニュースのあとの天気予報に続いて洗濯情報、花粉情報、それに地域の放射線量が表示される。これらの数値は、毎日ほとんど変わらないから、次第に人々は相場観を持つようになった。地元のスーパーや農協の直売場は事故発生後、県外産を並べて商品不足を補っていたが、測定器が備えられるようになって、次第に地元産も置くようになった。特産品の桃も昨年とはちがって値段も戻っている。
ほとんどすべての生鮮食料品、それにコメなどには放射能測定結果が表示されている。試験操業として相馬港で水揚げされたタコと貝は地元のスーパーで完売した。東京築地にも、つい最近再入荷を果たした。農林水産物の関係者の努力でここまで来たかと感慨深いものがある。
町で配布する広報誌にも詳しい線量が掲載されているほか、東電の補償対象となったことから、多くの避難者が簡易な測定器をドラッグストアなどで購入して、身近なところで空間放射線量を知ることが出来ている。一時帰宅した際も、この線量計で自宅の庭や家の中の線量を計測している。最近、富岡町は避難世帯に対して定置式の空間線量計を配布したので、刻々の値に加えて積算線量も知ることが出来るようになった。
自ら放射線を測ることで、教わらなくてもさまざまなことがわかるようになる。場所により時間により微妙に変化する放射線量、しかし、その変化の幅は極めて小さいこと、どこに行っても放射線はあるということ、県などが公表する数字も自分で測定した値と大きくは違わないこと、遊びに行った栃木県の那須の御用邸の近くで、郡山市の避難先より高い数値が出ることなど。自分で測ることがなによりも不安解消に効果がある。このほど、飯舘村はホールボディカウンターを独自に購入し、飯館村民だけでなく、避難先である福島市の人々も内部被曝を測ることが出来るようにするという。なかなか解消されない内部被曝への不安だが、これも定期的に測ることで不安解消を図るしかないだろう。

2012.8.9
北村 俊郎

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