日本エネルギー会議

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原子力規制委員会の要請

 読売新聞によれば、原子力規制委員会の田中俊一委員長は10月10日の定例会後の記者会見で、
原子炉建屋の貯蔵プールに置かれる使用済み核燃料を取り出し、地上で「ドライキャスク(空冷式金属容器)」に
入れて管理するよう、電力各社に速やかに要請する方針を明らかにした。
核燃料保管の安全を確保するのが狙い。田中委員長は「設置場所は敷地内にこだわらない」との考えを示したが、
保管場所の変更は、地元自治体の了解が必要。「できるかどうかは事業者と地元自治体との関係」と述べるに
とどめた。続いて同紙は、使用済燃料は、青森県の再処理工場に運ばれる予定だが、工場の完工が遅れ、
各原発には使用済燃料がたまり続ける。敷地内の共用プールはほぼ満杯で、貯蔵プールに置かざるを得ず、
事故によるプール破損、冷却機能の喪失などで放射性物質が放出されることが懸念されていた。と解説している。
 これを読むと、原子力規制委員会は明らかに原子炉建屋の貯蔵プールは建屋外のドライキャスク置き場より安全性が劣ることを認めている。それどころか、速やかに移すように要請するということであれば、原子炉建屋内に大量の
使用済燃料を貯蔵出来るようなプールを作ること自体、設計上問題があると言っているのと同じだ。
 一時的にせよ原子炉から取り出した使用済燃料は原子炉建屋内の貯蔵プールに置かざるを得ない。
そのプールの耐震や冷却維持に問題があるならば、その補強や冷却系の多重化、万一に備えた対応策も必要が
あるが、委員会はこれについては述べていない。今後、原子力規制委員会が、原発再稼働に向けて個別の原発の
安全性について検討する場合、使用済燃料が原子炉建屋内の貯蔵プールからドライキャスクに移っていなければ
安全だと認めないつもりなのだろうか。そうなれば、ほとんどの原発で再稼働に数年間はかかることになる。
確かに福島第一原発や東海第二原発など既設のドライキャスク建屋内の使用済燃料は東日本大震災でもまったく
問題はなかった。だが、両社も現在、ドライキャスク置き場をむつ市に建設中だ。両社以外の電力会社は、
まだ計画も明らかにしていない。
 今後、原発の運転が再開されるとすれば、各サイトにドライキャスクの形で使用済燃料が、どんどんたまり続ける
ことになる。これに対して地元の自治体や住民が、際限なくこれを認めるとは思えない。
今回の原子力規制委員会の要請は、当面のリスクを低減するには役立つが、その先をどう考えているかが
まったく見えてこない。

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