日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

雇われ監視人

 いまでも時々思うことがある。それは福島第一原発の原子炉主任技術者だった人は、
どんな思いだったかということだ。自分が主任者として監視してきた原子炉が、地震や津波で電源を
失って炉が空焚きになり、未曾有の原子力事故を起こしてしまった。内心忸怩たるものがある一方、
誰が原子炉主任技術者であったとしても、同じことだったはずだとも考えたかも知れない。
東京電力の本店の役員室にいた監査役たちも、会社が経営破綻寸前まで追い詰められ、
多くの被災者から賠償請求を受けることになり、経営監視の役割が果たせなかったことは残念だったに
違いない。
 電力会社においては複数の監査役がおり、組織上も考査室、グループとして監査役会や監査委員会
が存在している。
関西電力には経営監査室、東京電力は品質・安全監査部、北陸電力は原子力監査室、
四国電力は原子力監査担当などもある。また、運転中の原発では、法令に従い、原子炉主任技術者、
放射線取扱主任者、ボイラータービン主任技術者、核燃料取扱主任者、安全管理者などが選任され、
国家試験を通った資格者が任命され、その氏名が所管官庁に届けられている。
東京電力においても、本社や現場にこのような会社の存立を危うくするような問題を見つけたり、
原発の安全を監視したりする役割の組織や人が多数配置されていたが、大事故は防ぐことは
出来なかった。
3.11以前に原子炉主任技術者から、原発の自然災害に対する備えが不十分であること、
過酷事故に対する教育訓練が不足しているなどの指摘がなされていてもよかったのではないかと
考えるが、ほとんどの場合、検査立会いで多忙な上、副所長や次長との兼務で、幅広く、
あるいは根本問題を考える余裕はなかったというのが実態だったのだろう。
 体制が機能しなかった原因は、簡単に言ってしまえば、監査役も主任者も社員であることには
変わりなく、社長や所長の部下であり独立性に問題があったことだ。原子力安全・保安院が原発を
推進する経済産業省の中にあったことと構造的には同じである。
会社の事情を知るだけに思い切ったことは言えない立場である。また、指摘してもラインの抵抗が
ありうる。監視部門は自らその役割を矮小化していたふしがある。
 ラインが情報を出さず、知るよしもなかったうえに、監視部門も広く情報を集め、想像力を働かせて
脅威に気づく努力が不足していた。社長など任命した側も、監視部門から積極的に警告を聞くという
姿勢に欠けており、法律で定められたことを満足し、形式的に体制が整っていることで満足し、
根本的問題への指摘は期待していなかったのではないか。
 こうした体制は、今回のような事故の防止には実効性がほとんどなかったことが明らかになったが、
東京電力をはじめ各電力会社ではこの反省をどのように活かそうとしているのだろうか。
また、法定の主任者の役割について管轄する役所はどのように考えているのだろうか。
いまだに見えないことがたくさんある。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter