日本エネルギー会議

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復興費用の還流

福島の復興に向けて、原発の事故収束・廃炉、地域の除染、被害者への賠償に巨額の金が
投じられている。いままで、原発で使われる金は、電力会社からメーカーやゼネコンに支払われ、
そこから系列の下請工事会社、中堅の土建業に流れ、さらに地元の中小企業に流れた。
メーカーやゼネコンは大組織であり、本社ビルと研究所を持ち、多くの技術者や管理者を抱えている。
また、原発の設備を製造するには、巨額の設備投資と運転資金が必要で、それらは電力会社などに
納める製品価格や建設工事価格に含まれていた。メーカーから系列の工事会社には工事代金の
6割程度で発注されるが、4割は確保しなければメーカーとしてはやっていけない。
福島復興のための費用は、原発の建設と比較しても大きな額となろうとしている。
この内、地元福島県に確実に落ちる金は、第一に、事故収拾、除染、インフラ復興に当たっている
各企業の雇用している従業員が生活のために地元で使う金で、宿泊費、飲食費、交通費などとなる。
第二に、企業が工事などに地元から調達する物資やサービスに支払う金で、賃借料、資材購入代、
レンタル料・リース料、通信費、運送費などである。第三に、賠償をもらった事業主や個人が
生産再開のためや、個人が生活のために使う金である。賠償は当面、地元の銀行に預けられるが、
いずれ引き出されて家や家財の購入に当てられる。福島県内の都市部では、復興や賠償によって、
家を建てたり車を購入したりと、一時的な消費ブームが起きているが、これもそのうちに落ち着く。
今回の復興で、県内の経済活動が東日本大震災・原発事故の以前の水準に戻るのは、
時間がかかりそうだ。事故の収拾・廃炉や地域の除染に支払われる金は、生産活動再開の条件づくり
であって、それ以上に生産活動を高めるためのものではない。逆に、県内における企業や個人の
旺盛な消費は、最終的には東京などの大小の企業に売上として吸い取られて行く。
それらは、企業全体の人件費や福島県以外からの材料調達、株主への配当、金融機関に支払われる
利子、設備の原価償却、企業の新たな設備投資、税金や保険料、内部留保などに当てられる。
こうして一旦は大都市の企業や電力消費者から福島県に渡された金は、再び大都市の大小の企業に
還流されていくのだ。
家屋など財物への賠償が行われるとみられる来年、事業主への休業補償が終わりとなる再来年、
農業への補償が終り、除染活動も一段落する5年後には、福島県内は深刻な経済状況が到来する。

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